
「気象レーダー」白いドームの中には何がある? 何を、どうやって測ってる?
今も進化中!気象観測「三種の神器」より高性能の気象レーダー
地形の影響などによって降水が発達・衰弱する効果も計算して、精度の高い予測を行う高降水ナウキャストに用いられる気象レーダーは、より性能の高い二重偏波ドップラー気象レーダーへ全国的に置き換えられていっています。
この新しい気象レーダーは、電波の振動方向が異なる水平・垂直の2種類の電波を用いて雨粒の特徴をとらえることで、降水強度を従来よりも正確に観測するレーダーです。降水ナウキャストの雨量予測精度の向上が期待されます。
また、この気象レーダーは、雨、雪、雹(ひょう)の区別も可能です。

現代気象予報の中核「数値予報」の弱点
現代の気象予報の中核をなすのはコンピュータによる数値予報ですが、この数値予報では、地球大気を水平方向にも垂直方向にも細かく区切ったモデルを仮想します。
数値予報モデルの格子間隔は、全球モデルの場合、水平方向に1辺20km、鉛直方向には数十m〜数km程度の格子です。地上に近いところでは、鉛直方向には細かく(数十m から数百m ごとに)格子が分けられているものの、水平方向に20km以下のスケールしかない個々の雲や地形・陸と海・植生などは、格子点値では表すことができないという問題があります。

格子内の物理現象の効果は、数値予報の分野では物理過程と呼ばれており、物理過程を格子点の物理量に反映させることをパラメタリゼーションと呼びます。
パラメタリゼーションにおいて、考慮しなければならない物理過程は、基本方程式のように確立した理論ではなく、未解明な部分が多いので、根拠のあいまいな仮定やパラメータが入っている場合もあります。数値予報の技術者・研究者が日々改良につとめています。
数値予報との連携で精度向上が期待される
このように、数値予報モデルでは、積雲を表現できる解像度がないので、格子内の雲による現象が反映されていません。水平方向に20kmスケールの格子内全体ではなく、限られた箇所で1kmスケール程度の積雲が発達したとしても、熱や水蒸気を鉛直方向に輸送しますから、たとえ格子点値では上昇気流ではなかったとしても、雲による輸送の効果を格子点値に反映させなければならないわけです。
この二重偏波ドップラー気象レーダーがとらえる雲の粒子のようすを、パラメタリゼーションの過程に取り入れれば、数値予報の向上も期待されるわけです。また、こうして得られた観測データは、国際ネットワークを介して世界中で共有され、他国の数値予報にも寄与しています。
従来の天気図からわかる気象情報から、最新のコンピューターによる数理予報の技術まで、気象予報の話を中心に、気象現象の原理に迫る! 著者の経験やエピソードも織り交ぜられ、気象のさまざまなことが理解できる1冊です。
『図解・天気予報入門』詳しくは、https://gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065246825 から