重力波は、どうやって発生する?
今度は重力源である地球が激しく動いていたら何が起きるかを考えてみます。
地球は布をへこませていますので、へこませた部分を激しく動かすようなイメージです。すると、周りの布のへこみ方は時々刻々と変化し、ちょうど波のように外向きに伝わります(図3)。

これが重力波のイメージです。重力の強い天体が激しく動くと、その周りの時空の歪みが波のように伝わっていきます。このことから、重力波は「時空のさざなみ」と表現されます。
では、重力波がやってくると一体何が起きるのでしょうか?
重力波は時空の「波」ですので、時間と空間が波打つように変化します。具体的には、1m と思っていた長さ(空間)が1mでなくなるのです。1秒だと思っていた時間が1秒でなくなるともいえます。
そんなことを実感したことはないと思いますが、それは仕方がありません。重力波は非常に微弱なため、私たちがそれを日々の生活で実感することはありません。
重力波の大きさを計算するには?
ここで重力波の微弱さを実感してみましょう。
重力波の振幅はhで表し、重力波によって長さLがΔLだけ変わったとき、「h=ΔL/L」となります。つまり、重力波の振幅は長さの変化の割合で表します。
割合ですので「長さ」などの単位はもたないことに注意してください。
重力波の振幅hを式で表すと、図4のように書けます。文字がたくさんあって一見取っつきにくいですが、心配はいりません。

まず、先頭にあるε(イプシロン)は重力波の放ちやすさを表す量で、物体の動きの非対称性の度合いで決まります。とりあえずここでは気にせず1としておきましょう。
重力定数Gと光速度cが出てきますが、これらはどちらも定数です。
ということは、重力波の振幅を決めるのに重要な量は、天体の質量M、天体の速度v、天体までの距離dの3つだけなのです。
つまり、どのような質量(M)の天体が、どれぐらいの速度(v)で動いているかが分かれば、あとは天体までの距離(d)を指定すれば、重力波の振幅を計算することができます。
正確には、速度の変化があること(加速度)が重要なのですが、それはε に含めてしまうことにします。
さて、図4の式の形を見てみると、どのような現象が強い重力波を放つかが分かります。
天体の質量Mが大きい方が、時空がたくさん歪んでいて、重力波が強そうですよね?
その予想通り、重力波の振幅は質量に比例します。また、物体の速度が速い方が重力波が強くなり、振幅は速度の二乗に比例します。あとは、距離dが分母にあるので、距離が遠いほど重力波の振幅は小さくなります。これも納得できますよね。
これで重力波を実感する準備は整いました。