そして、最後の殺し文句は決まって次のようなものだったという。
「だまされたと思って飲んでみんか?」
そう耳元でささやかれると、多くの重病患者やその家族は、藁にもすがる思いで黒神の人骨黒焼きを購入したという。
1日3回の服用で、1ヵ月分で3000円という価格設定は、この時も変わらなかったようだ。
材料の「人骨」を手に入れた方法
ところで、黒神はどうやって、黒焼きの材料である人骨を大量に入手していたのだろうか。
入手ルートは、主に二つあった。
一つ目は町の火葬場だ。黒神は殊勝な顔をして火葬場に頻繁に顔を出していた。時には日が沈んでから忍び込んだりもしたらしい。当時の田舎の火葬場では、葬儀が終わると人骨のカケラがごろごろ転がっていたという。それを造作もなくくすねてきたわけだ。

もう一つの入手ルートは墓場だった。黒神は良質で新鮮な人骨を入手するために、新しい遺体や遺骨が墓におさめられると、すぐ墓地に忍び込み、時には地面を掘り返して、人骨を手に入れていたという。新しい骨のほうが薬効が高いと思われていたので、とにかく新しい死体を掘り起こしていた。
そこには黒神のこだわりがあった。先述の通り、黒神に詐欺を働いている意識はなかった。彼は本気で人骨黒焼きの薬効を信じ、病気の特効薬になると確信していたのだ。
そして、当時はまだわずかながら、その地域に土葬の習慣も残っていたそうだ。土葬された墓を暴けば、多少古い墓であっても、確実に大量の人骨を入手できた。