1パイ500万円の「ブランドカニ」も登場…ここにきて「カニの値段」が高騰しているワケ
カニが旬の季節がやってきた。真っ赤な殻をこじ開けてプリッとした白い身肉が飛び出てきた時の幸せは、何物にも代えがたい。最高に美味しく食べるため、知っておきたいカニのうんちくを大公開する。
記録的不漁で争奪戦に
うおお〜っ!という声と拍手の中心で、カニの胴についた10本の手脚がもぞもぞと動く。市場に来ていた女性の「これ500万円!?」の悲鳴に「おう、明日の新聞1面トップやで」と誇らしそうな声がした。
これは今年11月、石川県・加能ガニの初競りでの光景だ。このときは最高級ブランド「輝」が史上最高価格の1パイ500万円で競り落とされ、景気のいい声が響いた。だが、漁の最盛期である12月になっても各地で不漁が続き、カニは記録的な高値になっているのだ。
12月中旬、東京・築地場外市場に並ぶ松葉ガニ。1パイ2万3000円の値札がついている。
「毛ガニも去年の2倍の高さ。築地でカニの売買が盛り上がるのは12月24日からと相場が決まっているが『12月25日の出荷分からはさらに上がる』とさっき連絡が来ました」(水産会社スタッフ)

築地でカニを数多く取り扱う「斉藤水産」の統括責任者・斉藤又雄氏は「商売をして40年になるけど、ここまでの高値は初めての経験」と言う。
「ただ、いくら高くてもカニを食べると、”日本の冬が来た”と感じることができますからね。なんとかお客様に届けたい」
高騰しているだけに、今年のカニはより貴重な宝物になっていると言ってもいいだろう。
「現在のようにカニが高級食材として食べられるようになったのは比較的最近のことです。
江戸時代まで浮世絵などに描かれていたのは、小ぶりのワタリガニ。それも庶民でさえ下魚とみなす食材でした。一説によれば、明治期のタラ漁で怠け者の漁師が網を引き揚げるのを忘れ、網が海底に着いてしまった。
慌てて引き揚げるとそこに大量のカニがかかっていて、近海に大ぶりのカニがいることに気がついたとも言われています」(国立科学博物館・名誉研究員の武田正倫氏)