プロに聞いた、”タラバガニ”と”毛ガニ”の、おいしい「食べ方」と「見分け方」
カニがおいしいこの季節。前編の「1パイ500万円の「ブランドカニ」も登場…ここにきて「カニの値段」が高騰しているワケ」では、ズワイガニの知られざるトリビアから、とれたてのカニの一番おいしい食べ方までを紹介した。後編でも引き続き、カニの魅力についてお伝えする。
共食いで養殖できない
ここまで最も高値で取り引きされるズワイガニの紹介をしてきたが、もちろん他にも美味なカニはいる。現在、ズワイガニと並んで三大食用ガニといわれているのは、タラバガニと毛ガニだ。
「カニが高級食材と言われる理由はいくつかありますが、一つには養殖ができないということがあります。カニは1ヵ所に大量に集めると、大きなハサミを使って共食いしてしまうのです。2番目の理由は、きわめて成長が遅いことです」(国立科学博物館・名誉研究員の武田正倫氏)
エビが1年で大人になるのに比べ、カニは市販サイズになるのにズワイで10年、毛ガニで7年、タラバに至っては20年もかかる。タラバガニの寿命は30〜35年とみられ、甲殻類で最も成長が遅く寿命も長いとされる。

英語で「キングクラブ」と言うだけに、タラバガニは海外でも人気が高く、戦前には有力な日本の輸出品だった。小林多喜二の名作小説『蟹工船』の舞台は、タラバガニ工場だ。武田氏が続ける。
「一番美味しいカニはどれかと問われた時、誰でも美味しいと思うのはタラバかもしれません。くせがなくて、そのまま食べてよし料理の材料としてもよしの素材です。ですが、私は研究者として、タラバを推すのはためらいがある。なぜならタラバは分類学的にはヤドカリの仲間だからです」
見比べてみるとズワイガニや毛ガニはハサミのついた爪が1対と脚が4対あるのに対して、タラバガニは、脚が3対しかない(実際は甲羅の中に小さな脚が1対ある)。