30歳未満の30人のイノベーターを選出するForbes JAPANの「30 UNDER 30 JAPAN」。2021年に大谷選手らと並んでこの賞を受賞した山口歩夢さん(26歳)は、廃棄物の酒粕を原料にジンなどを造った醸造家・発酵家だ。世界を変えると期待される山口さんだが、実は高校時代は建築を目指していた。山口さんの人生の転機となったのは、1冊の漫画との出会い。山口さんに影響を与えた漫画『もやしもん』との出会いから、漫画を地で行くような在学中の逸話などを、山口さんからお聞きした。『もやしもん』 のマンガとともにご紹介する。

菌が見えるという主人公の沢木を疑い、詰め寄る研究室の長谷川 (c)石川雅之/講談社『もやしもん』1巻より

「かもすぞー」で大ヒットの大人気漫画

石川雅之さんによる大ヒット漫画『もやしもん』をご存知だろうか? 肉眼で菌を見ることができる主人公・沢木が、某農業大学で、菌・ウイルスと格闘しながら、仲間たちと実験、研究(闇研、密造とも言う)にいそしむ学生生活を描いた漫画である。2006年に連載がスタートし、翌年にテレビアニメ化、さらに第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞や第32回講談社漫画賞を受賞し、大きなブームとなった。 

ユニークな登場人物とユーモアたっぷりのストーリー展開もさることながら、発酵や醸造の仕組み、ワイン、日本酒などの格付け法と問題点、身近な調味料の知らない背景など、食事情と情報がしっかりと書き込まれ、学びも多い。さらに欄外にも、登場人物紹介に交じり、マニアックな豆知識が満載。じっくり時間をかけて読み込みたい、漫画そのものが発酵食品のようなコミックなのだ。 

 

また登場人物同様、ユニークでマニアックな発酵食品や醸造の描写は、「美味しそう」というよりも、「食べてみたい」「やってみたい」好奇心がくすぐられる。所詮は漫画の世界、と思いきや、本当にそれを実行してしまった若者がいた。 

見るからに「臭そう」な、発酵エイのお味は?(c)石川雅之/講談社『もやしもん』1巻より

75年続く老舗の建築内装会社の跡取り息子として生まれながら、『もやしもん』と出会い、漫画のストーリーを追うように発酵、微生物、醸造、蒸留の研究を続け、2021年Forbesが選ぶ、「世界を変えるunder30」の一人にもなった山口歩夢さんだ。