2022.01.20

地球の中身はなんだろな? 目には見えないけれど、音は聞こえる!

地震波観測からわかる層構造と動き

地震のしくみを説明する図として、日本列島の下に太平洋プレートが沈み込む様子を描いた、地球の断面図を見たことがないでしょうか。東側から移動してきた海のプレートが日本列島をふくむ大陸のプレートにぶつかり、斜めに沈み込んでいく様子が、もっともらしく表現されています。

地球全体をまっぷたつにした断面図も、見たことがある人は多いと思います。たいてい地殻・マントル・外核・内核という層構造が表現されています。

しかし、誰もまっぷたつの地球など見たことがないはずです。沈み込んだプレートだって、断面として見ることはできません。

地球科学者はどのようにして「地球の中身」を理解してきたのでしょうか? このたび『地球の中身——何があるのか、何が起きているのか』を上梓した、廣瀬敬氏に解説していただきます。

見えない領域

「地球の中心は太陽系の果てよりも遠い」と言われることがある。

たとえば、かつて太陽系のもっとも外側の惑星とされた冥王星は、太陽からおよそ59億kmも離れていて、これは地球と太陽の距離(=1AU=約1億5000万km)の約40倍に相当する。いっぽう、地球の表面から中心までの距離(つまり地球の半径)は約6400km。比べるのがばかばかしいほど、冥王星は遠い。

では、冒頭に紹介した言葉はどういう意味だろう。それは観測・アクセスのしやすさを比較した言い回しだ。

冥王星は、1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボーにより発見された。いっぽう、地球の中心部に固体の金属でできた構造、内核が発見されたのは1936年――デンマークの地震学者、インゲ・レーマンの功績である。つまり、内核は冥王星よりも見つけにくかったのだ。

また、NASAが2006年に打ち上げた探査機ニュー・ホライズンズが冥王星に接近し、その表面の様子の観測に成功した。その観測から、冥王星ではいまも地質活動が起きている(氷の湧き上がる場所があり、表面を覆う氷が移動している)ことが明らかになった。なお、ニュー・ホライズンズはさらに太陽・地球から遠ざかり、太陽系外縁部の観測を続けている。

探査機が太陽系を飛び出す時代になっても、地球内部に探査機を送り込むことはできていない。それどころか、人類が掘ったもっとも深い穴の深さはたった12km――地球の半径のわずか0.2%だ。地球中心の内核に探査機を送り込むなど、SFでしか実現できないだろう。もちろん、内核で起きている活動の直接観測も不可能だ。

宇宙空間と地球内部のちがい

なぜ冥王星は地球の中心と比べて観測もアクセスも容易なのだろうか。

それは、宇宙空間は物質が希薄、つまりほとんど物質が存在しないからだ。もちろん、星(たとえば太陽)や惑星(たとえば地球)は物質のかたまりではあるが、こうした天体と天体のあいだには何もない空間が広がっている。したがって、光の進行は基本的に妨げられないし、探査機は行く手を阻まれにくい。

翻って、地球は大部分が固体である。物質がぎっしりと詰まっている(古くは地球の内部に大きな空洞があると信じられていたそうだが、その考えはすでに否定されている)。光は反射されるし、穴を掘るには多大なエネルギーが必要となる。

【イラスト】地球はほとんど個体地球の中はぎっしり詰まっている! photo by gettyimages

したがって、「地球の中身」は見ることができない。とはいえ、すでに述べたとおり、地球の中心には固体の金属(内核)があることがわかっている。これはいったいどういうことだろう。

光を通さない物質のかたまりの内部を「見る」方法がある。じつはそうした方法はわりと身近なものだったりする。

みなさん、1回くらいはレントゲン撮影を受けたことがあるだろう。これは、X線(私たちが目で見る可視光とは波長の異なる電磁波)を用いて体内の様子などを調べる検査法だ。X線は物質によって透過度が異なる。人体では、皮膚や筋肉はX線を透過する一方で、骨は透過しにくい。この差を利用して、露出させることなく骨の様子を観察することができる。

そう。地球の中身を観察するための「地球版レントゲン撮影」がある。

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