2022.01.24
# ライフ

「相場を無視した売値」で契約寸前…87歳認知症の女性が巻き込まれた「不動産売買」トラブル

福田 亮 プロフィール

不動産業者に騙されるところだった

そのことを伝え、その場は一旦収まったのですが、後日、現場にいた区役所の方から連絡があり、「福田先生が後見人になってくださいませんか」とお願いされました。

佐々木さんの場合、当時はそこまで認知症が進んでおらず、日常生活に支障のない程度だったので、後見より一つ軽い「保佐」という形が妥当でした。そこで裁判所に申し立てをして、私が佐々木さんの保佐人となりました。

今は、私が佐々木さんの保佐人として財産の管理をしていますが、実は最初、マンションの玄関前で初めてお会いした時、佐々木さん、騙されるところだったんです。

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契約を進めようとしていた不動産会社の提示内容が、相場の3分の2程度の金額という、佐々木さんにとても不利な条件でした。あの時、本当に止めておいてよかったと思っています。

この不動産業者とは、佐々木さんの一件以降、取引をしていません。

佐々木さんの場合、同じマンションに住む親しい方が「最近変な人が来ている」と警戒していたからよかったけれど、認知症の方が不利な条件であることに気づかないまま売ってしまうケースは、かなり多いのではないでしょうか。

筆者が保佐人として入ることで、佐々木さんの生活は、その後、一変しました。一部始終を後編〈「お金がない」と怯えて暮らしていた87歳認知症の女性が「終の棲家」を見つけるまで〉でお伝えします。

取材・文/稲田和絵

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