やりたいことをやるために、やりたくないことも
その疑問に対して、伊吹さんはこのように続けました。
「コロナと共存していく社会で、いろんな人がすごく生きづらくなっているのは感じるんです。“この業種はもうダメ”とか“安定している仕事につかないといけない”という想いが強くなっている。もちろんそういった判断も必要なことには間違いありません。でも、自分達はやりたいことをやるためにやりたくないことも必死でやっているなと感じています。ただそれがやりたいことのためだから全然苦じゃない。やりたくないことのために、やりたくないことを続けていくのは中々パワーが出てこない人が多いと思います」

伊吹とよへさんのスケジュールや仕事のやり取りについても聞いたところ、動画制作に関連する時間以上に、企業担当者の方との打ち合わせや他のインフルエンサーの方との調整、資料制作だけでなく、「どうやればうまく進むか」といったある種日本人らしい根回し的な気遣いまで、一般的なサラリーマンと遜色のない仕事が多いという印象でした。
やりたいことだけで生きていくというものの、やりたくないことや辛いことを積み重ねた先にしかそれはないというのが、伊吹さんの考え方だそうです。
コロナ渦の影響で旅行業やサービス業などを始めとする夢を諦めた人はたくさんいる、それは仕方のないことではあるかもしれません。しかし、その中でもやりたいことを探してほしいというメッセージがYouTubeのCMと異なるポイントと言えるでしょう。
彼らの言葉からは、「自分達と同じTikToker になってほしい」、「フリーランスで働くべき」など、所謂世間が思うような『やりたいことで生きている人たちになれ』ということでなく、どこで働くにせよ「やりたいことにチャレンジしてほしい」、「周りの声を聴きすぎないでいいんだよ」というメッセージを感じました。
Z世代をはじめとする若者たちには、「年金問題はどうなるのか」や「終身雇用が守られるのか」といったように『自分達の世代が結局損するのでは?』という意識を持っている人が少なくありません。そして、その疑念の現実味を色濃くするかのように各メディアでもそういった報道がされるようになっています。
今回のインタビューを通じて、若者たちの置かれた状況の中で、批判や世間の目を気にして、コロナでやりたいことをできなかった世代と称されるよりも、少しでもやりたいことを自分で探して、それを信じ、自らの力で切り拓いていくということが今の若者たちには求められているのではないか、というメッセージを感じ取ることができました。