先端分野で、台湾はすでに日本を抜いている
なぜ台湾はこのように高い成長率を実現できるのだろうか?
それを理解する鍵が、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、台湾積体電路製造)という企業にある。これは、半導体のファウンドリ(受託製造企業)だ。最近、しばしば話題になる世界最先端的の半導体メーカーだ。
TSMCは、粗利益の売上に対する比率が、45.0%にもなっている。これは付加価値生産性が極めて高いことを示している(図表2を参照)。東芝も半導体生産を主要事業とする企業だが、粗利益の売上に対する比率はわずか6.8%でしかない。サムスンの29.2%やトヨタの14.9%と比べても、TSMCの生産性の高さが印象的だ。
それだけではない。時価総額は6405億ドルで、世界の第10位だ。31位トヨタ自動車の2777億ドルの2.3倍になる。粗利益に対する時価総額の比率は、将来の成長期待を表わしていると解釈することができる。TSMCは27.6倍で、サムスンの6.7倍やトヨタの7.2倍に比べて、顕著に高い。
■図表2 主要企業の時価総額など

それだけではない。他の企業ではどうしても製造できないものを製造できる。いま、世界中がTSMCの半導体技術に依存している。世界的な半導体不足の中で、世界の様々な企業のトップが台湾を訪れて、TSMCに生産を引き受けてもらうよう頼んでいる。
それだけではない。自国に工場を持ってきてほしいと要請している。TSMCは、アメリカ政府の強い要請によって、アリゾナ州に工場を建設することになった。この計画は、2020年5月に発表された。20年12月に工場建設許可が下りて、24年から生産が開始される。
日本も、数千億円の補助金を支出して、日本に工場を作ってもらうこと決定した。しかし、最先端の半導体生産工場を誘致することはできなかった。
このような企業が存在することを考えると、台湾はすで日本を抜いていると言うべきかもしれない。