2022.01.18
# 節約 # 年金

年金を「75歳」から繰り下げ受給すると、逆に「大損」するかもしれないワケ

税金や医療費のこと、考えていますか?
森永 卓郎 プロフィール

実は、手取りが400万円以上も減る

同様のことを今回の設定で、再検証してみよう。話が複雑になるので、ここでは年金受給者に妻はおらず、単身世帯だと仮定している。

まずは年金の給付水準が現状通りだとする。現状は夫の厚生年金が月額14万6162円だから、年収では175万4000円となる。住民税と国民健康保険の保険料は、東京都世田谷区のものを使って計算すると、税・社会保険料負担は年間で17万1000円だ。

一方、年金受給開始を75歳からにすると、年金収入は322万7000円と、147万3000円増える。しかし、税金と社会保険の負担が52万7000円と3倍以上に増えるから、手取りは111万7000円増にとどまってしまうのだ。

それでも受給開始年齢の繰り下げで、手取り収入が大きく増えるのだから、よいのではないかと思われるかもしれない。しかし、10年間の繰り下げを選ぶということは、65歳から75歳まで一切年金を受け取らないということだ。

65歳男性の平均余命は19.93年だから、65歳受給開始なら20年間、75歳受給開始だと10年間が平均的な年金受給期間となる。そこで、生涯の年金手取り収入を計算すると、65歳受給開始の場合は3166万円であるのに対して、75歳受給開始の場合は2700万円と、466万円も生涯の年金手取り額が減ってしまうのだ。

表:年金開始75歳へ繰り下げの効果(『長生き地獄』51ページより)
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このことの原因として、分かりやすいのは、表に示した税社保比率の欄の数字だ。これは、年収に占める税金と社会保険料負担の比率だが、65歳受給開始を選べば9.7%にとどまるのに対して、75歳受給開始を選ぶと16.3%と、負担率が7割も高くなってしまうのだ。

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