成果どころかマイナス効果
このように軍政はフン・セン首相には柔軟でASEAN特使の受け入れなどで譲歩する姿勢を示しながらも、スー・チーさんに関しては依然として厳しい態度を崩していない。
これは軍政があくまでスー・チーさんの政治生命を絶つことで、今後実施すると表明している「民主的な選挙」へのスー・チーさん自身や非合法化した民主政権与党だった「国民民主連盟(NLD)」関係者の関与を断絶する狙いがあるものとみられている。
こうした軍政の強硬姿勢にフン・セン首相のカンボジアが「利用」される懸念がASEAN内部でも高まっている。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領はミャンマー訪問前のフン・セン首相との電話会談で「実質的な進展がない限り今後のASEAN会議にはミャンマーは非政治的代表しか出席させない」と釘を刺したといわれている。
ASEAN大勢の姿勢はフン・セン首相が「実質9ヵ国のASEANを10ヵ国に戻さなくてはならない」とミャンマー首脳、つまりミン・アウン・フライン国軍司令官が欠席した状態を異常事態としてその回復に努力する姿勢を示しており、今後ASEAN内部でミャンマー首脳の会議出席を巡って亀裂が生じる可能性も高くなっている。
ミン・アウン・フライン国軍司令官との直接会談を「率直で腹蔵のない会談だった」と評価するフン・セン首相サイドだが、あくまで「訪問した」「会談した」というだけが成果に過ぎないというASEANの冷めた反応だ。
さらに「軍政にお墨付きを与えただけ」のマイナス効果だとして反発する反軍政のミャンマー国民と訪問・会談は散々の酷評にさらされている。
フン・セン首相の「スタンドプレー」は各方面に頭の痛い問題を突き付けている。