2022.01.17

「文化遺産」で見つかった“なないろ”の絶滅危惧種「ペタキン」の正体

“偶然の重なり”がつないだ「生命」
光にあたるとキラキラと輝き…赤く、そして青く光る“なないろ”の魚をご存知だろうか。その名を「ニッポンバラタナゴ」と言い、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされる「絶滅危惧※1A類(CR)」にも指定されている生き物だ。(※「1」はローマ数字)

2005年には古都・奈良の文化遺産「奈良公園」の敷地内にある池でも発見され、新聞報道にもなった。地元では「ペタッとしたキンギョ」の略称で「ペタキン」と呼ばれているそうだ。現地で発見からDNA解析までを担った近畿大学農学部環境管理学科の北川忠生氏が、その発見から保護・繁殖活動に至るまでの「偶然」がつないだ命の物語を語る。

(※本稿は北川氏へインタビューした内容をもとに記事を構成しています)

偶然の重なりがつないだ「生命」

「ペタキン」は、奈良県内では30年前に絶滅したと思われていました。それが奈良公園の池で発見されたのは全くの偶然でした。

しかも、私がDNA解析の専門家でなければ、そのタナゴが「ペタキン」だとは気づかれなかった。偶然の重なりがなければもしかしたら奈良公園の池でひっそりと生命をつないできた「ペタキン」たちの歴史を途絶えさせてしまっていたのかもしれないのです。

ペタキンとも呼ばれる「ニッポンバラタナゴ」/撮影 森宗智彦
 

今回、「ペタキン」が登場する『なないろ探訪記』の監修をさせていただいていますが、この中で主人公の少女・カナちゃんが、生き物好きの大学生・レイくんとの偶然の出会いによって「ペタキン」の保護活動に参加することになります。私も同じようなもので、いま「ペタキン」の保護・繁殖活動に携わっているのは偶然以外の何物でもありません。

関連記事