夫婦同姓の苦しみ Case07:「第三の選択肢」を探し求めて】

選択的夫婦別姓は全国の60歳未満の成人男女7000人を対象に行われた調査で「賛成」が7割を超えている(※)。岸田首相も、もともと選択的夫婦別姓推進派だった。しかし昨年の総裁選では、40年以上議論され続けているにもかかわらず、「議論が必要」と先送り。案の定、その翌月の衆院選では、政党の中で選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しなかったのは自民党だけだった。

そんな政治的状況に落胆している若い夫婦がいる。結婚6年目の、東京・八王子に住む京子さん(仮名・32歳)と晴人さん(仮名・32歳)。彼らは自分の姓を交替で名乗るために、3年ごとにペーパー離婚と結婚を繰り返しているという。2016年に夫姓で結婚し、2019年にペーパー離婚をして妻姓で再度法律婚。来る2022年の夏にはまた離婚をして夫姓で法律婚をする予定だ。

試みの珍しさから、過去にもネットメディアにも取り上げられたことがある2人。2回目の“姓の交替”をする年である今年、夫婦の姓について考えるきっかけとなった出来事から今に至るまでを改めて聞いた。

※早稲田大学の棚村研究室と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の合同調査。2020年10月22日~26日に、全国の60歳未満の成人男女7000人を対象に行われ、「賛成」は70.6%だった。

「夫婦の姓」の話で初めての大喧嘩

同じ大学の同期だった京子さんと晴人さんは、大学4年生の頃から結婚を前提に付き合い始めた。夫婦別姓について考え始めたのは、付き合い始めてすぐの頃にした大喧嘩がきっかけだった。

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ある日、将来について漠然と話し合っていた2人。晴人さんは将来留学を考えており、京子さんに「もし大学院に進んで留学することになったら、僕と結婚して一緒について来てくれないかな?」と聞いてみた。すると京子さんは、「私だって勉強してこれから自分のキャリアを築くつもりでいるのに、なぜあなたの将来のほうに合わせないないといけないの?」と思わず返した。
共働きの両親のもと、男女は平等に自己実現を追求するものという意識の中で育った京子さんは、留学をする彼のために自分のキャリアを諦めることはおかしいと感じたのだ。

 

結婚したら女性は夫の姓を名乗る、という暗黙のルールにも、子どもの頃から漠然とした違和感を覚えていた京子さん。小学生の頃、同級生の女の子が好きな男の子の姓の下に自分の名前を書いて、「なんかドキドキする」と言っていたのを見た彼女は子供ながらに、「気持ちはわかるけど、私は自分の名字を変えたくないな」と思っていたそうだ。

そうして留学と結婚の話になったときに、自然と「結婚したらどちらの姓になるのか」という話に発展していった。「結婚しても私は姓を変えたくない」という京子さんに「夫の姓に変えるのが普通なんじゃないの」と晴人さんは言った。この晴人さんの言葉に京子さんは反発し、大喧嘩になった。