食べることは、生きる基本。だから、子どもは“食育”を通して、食にまつわる正しい知識を身につけ、生きる力を育みます。でも、大人はどうでしょう? 食を取り巻く状況は日々目まぐるしく変わっています。深刻化している貧困問題や、社会全体での取り組みが叫ばれている食品ロス問題。漁業も、農業も、今大きな転換期にあります。未来の食を考えるには、現状を知ることが大切。まずは、今、地球で起こっていることを学びましょう。

監修: 井出留美さん
いで・るみ/食品ロス問題ジャーナリスト。政府や企業、国際機関と連携しながら、世界に向けて食品ロスの現状と問題を発信する。『食料危機』『あるものでまかなう生活』など著書多数

参考資料:国連WFP「世界の食料安全保障と栄養の現状2021」、厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」、ハンガー・フリー・ワールド「世界の飢餓と私の食」、井出留美『食料危機 パンデミック、バッタ、食品ロス』(PHP新書)農林水産省「食品ロス量(平成30年度推計値)」、農林水産省「漁業・養殖業生産統計」、水産庁「平成30年度水産白書」、シングルマザー調査プロジェクト

 

世界では10人に1人が飢餓。

世界で飢えに苦しんでいる人は最大で8億1100万人余り。つまり、世界で10人に1人が飢餓状態にある。新型コロナウイルスの影響も大きく、前年に比べるとおよそ1億6100万人増加。パンデミックにより、これまで問題視されていた食料問題がさらに悪化し、紛争や気候変動なども相まって深刻化している。飢餓が深刻な地域は主にアジアで、全体の半数以上を占める。次いで多いのがアフリカ。特に幼い子どもへの影響が大きく、5歳未満の22%にあたる1億4900万人が発育阻害(年齢に対して身長が低すぎる)、6.7%にあたる4500万人以上が消耗症(身長に対し痩せすぎている)の影響を受けている。

日本の子どもは7人に1人が貧困。

世界的に見ても“豊かな国”という印象がある日本。だが、子どもの貧困は他人事ではない。ここで語られるのは「相対的貧困」。所得水準が国民の所得平均の半分にとどかず、子どもが慢性的にお腹を空かせていたり、学校行事に参加できない、十分な教育がなされないといったことが危惧されている。そうした子どもの相対的貧困率は2018年時点で13.5%。ひとり親家庭に限ってみると48.1%とさらに厳しく、2世帯に1世帯が苦しい生活を強いられている。経済格差が進み、十分な食事ができず、お腹を空かせている子どもは7人に1人。日本の相対的貧困率は主要7ヵ国(G7)の中でも高水準。特に、ひとり親世代の相対的貧困率はG7中ワーストワンとなっている。

世界の穀物生産量の3/1が家畜の飼料に。

世界の穀物生産量は年間約27億t以上。人が生きるのに必要な穀物量を年間180kgと考えると、150億人以上を賄える計算になる。地球の総人口を十分に賄える穀物量があるにもかかわらず、なぜ飢餓が起きているのか? それは、穀物生産量の36%が家畜の飼料になっているから。さらに21%はバイオマスエネルギーとなり、食用として消費されているのは43%しかない。しかも、その43%を高所得国が過剰に囲い込み、その中から食品ロスを大量に生んでいるというのが現状だ。世界の飢餓問題は、食料が足りないのではなく、配分がうまくいっていないことも一因となっている。