大切なのは「楽しむ」「どんな大人が指導しているか」

脳は「シナプス」と呼ばれる神経と神経のつなぎ目を介してつながっていくことによって、活性化する。つまり頭がよくなっていくのだが、その進化を促進するのが「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質。脳にある神経細胞が作り出すタンパク質で、この物質は運動することで分泌されることが証明されている。

したがって、冒頭で挙げたチームのように選手の主体性、自主性を育てる指導者に寄り添ってもらえば、競技は何でもよい特に小学生の間は、楽しくスポーツすることが最も重要だ。それと異なり、スパルタ式で怒鳴ったり、勝利ばかり求める指導者のもとでスポーツをすると、本来なら運動によって活性化するはずの脳が逆に負のダメージを受ける。

大谷翔平選手はいつも「楽しい」が全身から溢れている Photo by Getty Images
 

身体的な暴力はないものの、言葉による暴力を受けてきた人の脳の調査では、「おまえなんて生まれなければよかった」「死ねばいい」などの暴言を受けていた人は、そうでない人と比べて会話機能をつかさどる脳の聴覚野が変形することも証明されている。

ところで、先ほどのお母さんの話をニコニコ笑って聞いていたら、どうやら息子さんはすでに空手教室に通い始めていることがわかった。空手は海外でも人気のスポーツだ。

「でも、同じマンションの子に誘われて入っちゃったんです。ただその子といたいだけなんですよ。やめさせてサッカーに通わせてもいいですよね?」

そりゃいかんでしょ。
早速、三つほどアドバイスさせてもらった。まず、友達と一緒にいたい気持ちを大切にしてほしいこと。二つめ。子どもに選ばせることが大切で、小さいときから親が決めてしまうと、自分で考える力は育たないこと。小さなことでも選択させる習慣をつけたほうがいい。
三つめは、「どのスポーツをするか」ではなく、「どんな大人が指導している環境なのか」を重視すべきだろう。

日本では、成人した大学生に対しても、指示命令を繰り返したり、スパルタ指導のコーチは今でも残存する。保護者や選手がそういったスポーツ環境を避け始めれば、ブラックな指導者は淘汰されるはずだ。