無駄な装飾を削ぎ落とし、日本の伝統的な美意識や技術を現代のライフスタイルに落とし込んだ家具やテーブルウェアが揃うTime & Style。また、昨年の第一回Japan’s Authentic Luxury=JAXURY大賞受賞にも輝きました。2021年12月、関西地区で初の直営店舗となるTime & Style Osakaを南船場の問屋街にオープン。関西地区の新たな拠点となるこの場所から、Time & Style代表・吉田龍太郎さん、そして、専務取締役である弟の吉田安志さんご兄弟に、新店舗のこと、海外での取り組み、Time & Styleが志す未来についてお伺いします。

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1.古いものと新しいものが調和するTime & Style Osaka

――昔ながらの趣が残る南船場の問屋街に位置し、1963年に建てられた大阪写真会館の1階フロアを改装したTime & Style Osaka。約60年もの歳月を重ねてきた壁面と天井はそのまま残し、モダンなテイスト家具と調和する心地の良い空間が誕生しました。代表の長年の夢だったという大阪の新店舗。なぜ、このタイミングで大阪でのオープンに踏み切ったのでしょうか?

吉田龍太郎さん(以下龍太郎さん)僕らは1997年にインテリアショップTime & Style Homeを東京・自由が丘にオープンしました。あれから24年、長らく大阪にお店を作りたいという思いで場所を探し続けていたのです。大阪にこだわったのは、東京に比べ、今回の大阪写真会館のような趣のある佇まいの建物が多く残っているから。大阪写真会館は約60年前の建物ですが、その時代の建物にはとても力があるなと昔から常々思っていました。タイミングよく出会えたこともあり、今回のオープンに至りました。

――実際にお店が出来上がりどうでしたか?
龍太郎さん:じつは、当初は大通りに面した立地を探していましたが、あるとき、自分達らしいお店とはどういうロケーションなのだろうと改めて考えました。昔風情で趣のある雰囲気を持つ場所のほうが、僕らの家具を置いたときのコントラストが思い描いているものになるだろう。そして、大阪の方々との距離を縮めるという意味でも、表通りより少しローカルな場所がいい。そうして、今の場所に出会い立地もよく、何より柱のない大きな空間がとても良いと感じた。まさに、想像通りに仕上がりましたね。

――Time & Style ならではの「木」を活かした空間ではなく、あえて、壁面と天井をそのまま残しているのですね。
龍太郎さん:当時の雰囲気を残したラフな壁は、長い時間によってしか生み出すことができない落ち着いた佇まいを見せます。つまり、この建物が育んできた58年間の時代を感じさせる足跡なのです。そういう壁に対し新しいものを組み合わせる。たとえば、入り口や奥に設置したサッシュフレームや木の床、我々の家具を置いたときのラフな壁とのコントラストが良いなと。この壁の質感や雰囲気は偶然でしか生まれないもの。ありのままの“自然”を活かしています。

――すべてを新しくするのではなく、自然と響き合うことを意識されているのですか?
龍太郎さん:そうですね。それは、木や素材の扱い方など、すべてに共通する考え方になります。もし、この壁をきれいに仕上げてしまったら、この建物が持っている本当の力が伝わってこない。正直、壁をむき出しで残すことは迷いもしましたが、新しいものとも調和できるギリギリの範囲で仕上げました。結果、理想通りのコントラストが生まれ満足しています。

――安志さんは大阪の店舗を見てどうでしたか?
吉田安志さん(以下安志さん):今、私たちが空間に並べている家具の素材は、樹齢100年の木を乾燥させ、加工し、製品にしています。建物と同じぐらい、またはそれ以上の時間が経過している素材を、私たちは使わせてもらっている。そういう歴史のあるものを扱うことは、僕たちのベースとしてとても大事にしていることです。家具はもちろん綺麗な状態でお客様に提案しますけれど、こういう歳月を重ねてきた空間と家具がどう対話していくのかは実際に設置してみるまでわからない。非常に面白いなと感じました。たとえば、この天井はコンクリートがむき出しになっていますが、コンクリートの表面には木の型枠の表情が写し出されています。木目からするとおそらく60年以上前の杉材だと思います。これは、今の時代では考えられないような施工の技術で作られているものです。こういう歴史を重ねた空間に納まるものとして、同じく長い月日を掛けて育ってきた木材や素材、伝統工芸や伝統技術を活かしたものづくりが私たちの技術と組み合わさる。すべてを綺麗にして整えるというより、古いものと新しいものとの「調和」はとても大事なことなのだと思います。

――Time & Styleさんは、家具だけでなく、全国各地の日本の技術を詰め込んだテーブルウェアも人気ですね。

龍太郎さん:家具ももちろん面白いですが、じつは、テーブルウェアにこそ日本の面白さが詰まっていると考えています。器はとても多様なもの。たとえば、陶磁器は全国に何千ヶ所という産地と窯元があり、それぞれの地域で歴史も違えば作っているものも違う。さらには、漆器もあればガラス、木工品もある。そのなかで、どのように素材を形にし、お客様に提供していくかを考える。お客様に長い時間軸で使っていただくことを考えれば、絵付けや染付をあまりせず、形をいじるより、素材や窯元の特徴をいかに活かしていくかを考えていく。一つの窯元を取っても、様々なバリエーションが出来るものなのです。テーブルウェアは「生活の道具」として、昔から途絶えずにずっと続いてきているもの。テーブルウェアに関しては僕らも特別なものだと思っていますね。

日本の工芸には、日本人の生活様式に深く根ざした独特の美意識や精神が育まれている。日本特有の緊張感・調和・静寂といった繊細な感覚を現代のライフスタイルに落とし込み、職人の手によって一つ一つ丁寧に創られた「生活の道具」を提案。

――テーブルウェアはTime & Styleさんの理念を形にしたものなのですね。
龍太郎さん:正直、ビジネス面で考えると、なかなか難しいことですけどね。たとえば、器が一つ売れると、新たに職人に注文をし、出来あがってくるまでに半年ほどかかる。さらには、テーブルウェアを作っている職人は80歳を超えた人が多く、先日も「年齢的に作ることが難しくなったのでもう辞めます」と言われました。後に続く世代がいないので、僕らがきちんと流通できるように仕組みを整え、次の世代の人たちに繋げていかねばならないですし、効率を考えると、工芸をビジネスにするのはナンセンスと言われることも多いです。2020年よりパートナー契約を結んでいる、イタリアのインテリアブランドBoffi | DePadovaからも、器のかわりにキッチン道具を置いたほうがいいのではないか、と言われたこともありました。とはいえ、先日、Boffi | DePadovaから、新しい食器のコレクションを作りたいと連絡がきました。すべての事象には矛盾がありますね。今は、素材の本質は変えず、現代の人たちが欲しいと思うものをいかにして提案できるのかというところを課題にしています。

日本には国が管理し、伊勢神宮や天皇家に献上するヒノキが育てられている地域があり、そこで育った木は官材と呼ばれている。その官材を使用し、長年受け継がれている伝統工芸で作られたシンプルな文箱(ふばこ)は、木目が詰まり優しい質感が特徴的。

――それでも、テーブルウェアがあるからこそ、Time & Styleの美意識も伝わりやすい部分があると思います。
龍太郎さん:家具は頻繁に購入したりするものではないですよね。けれど、食器は必要なときに自分で買ったり、プレゼントにしたりと、お客様が我々と接点を持ってくださる頻度が生まれる。テーブルウェアを続けるのかどうかの議題は常にありますが、それでもやりたい気持ちが勝りますね。とくに、器の世界は、使う人も知識を持っているので、販売スタッフも覚えることが多く大変。それでも続けたいなという思いが強いです。

 

安志さん:空間提案をさせて頂くとき、家具だけではなくテーブルウェアも一緒に提案させていただくことで、豊かさが広がっていきます。なので、やはりテーブルウェアは必要なものだと思いますね。