2022.02.21
# 勉強法

オックスフォード大教授が教える「デマ」や「陰謀論」にハマる人の思考法

名著『知的複眼思考法』に学ぶ(1)
苅谷 剛彦 プロフィール

「複眼思考」を身につければ、世間に流されない

「自分で考えろ」というのはやさしい。「自分で考える力を身につけよう」というだけなら、誰にでもいえる。そういって考える力がつくと思っている人々は、どれだけ考える力を持っているのか。考えるとはどういうことかを知っているのか。本を読みさえすれば、考えることにつながるわけでもない。自分で何かを調べさえすれば、考える力が育つわけでもない。ディスカッションやディベートの機会を作れば、自分の考えを伝えられるようになるわけでもない。

調べることをどうすれば考えるというプロセスに組み込んでいけるのか、どのように議論のしかた、本の読みかたを工夫すれば、考える力を鍛えていけるのか。そのための具体的な方法を欠いたままであれば、自分で調べたことも情報の焼き直しで終わったり、本を読んでもわかったつもり、ディベートしてもその場かぎりの意見表明に終わってしまう(だからこそ、教育社会学を研究している私は「自ら学び、自ら考える」力──「生きる力」の育成を目指す教育改革の安易さを危惧してきたのである)。

考える力をつけるには、どうすればいいのか。ものの見かたを変えるにはどうしたらいいのか。その方法を、できるだけ具体的に、しかもわかりやすく伝える。それはいうほどにやさしいことではない。

本書がどれだけ成功しているかは、読んでくださる方々の判断にまかせるほかないが、幸いに、今回「+α文庫」版(文庫版は2021年刊行)として出版される運びとなった。本書が提示した方法が、付け焼き刃的なハウツーではないものとして、読者の方々から少しは評価していただいたおかげではないかと感謝している。

今回文庫版の出版に当たり、コラムをひとつ加えたほかは若干の字句の修正や事例の更新を行うにとどめた。例としてあげたエピソードについても、少々時間が経過してしまったものでも、ほぼそのままにしてある。大筋は変えていない。考えかたの筋道をつけるための「基礎・基本」は、そうやすやすと変えられないからである。

時代の空気に流される度合いが増している。文庫版として本書が手に取りやすくなり、少しでも多くの人々が、空気に流されない「複眼思考」の力を鍛えていただければ、著者としては望外の幸せである。

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