四半世紀もの長きにわたって、若いビジネスパーソンや大学生に読み継がれてきた書籍が、「独学に役立つ名著」として、いま再び注目を集めている。
1996年に刊行された『知的複眼思考法 誰でも持っている想像力のスイッチ』(講談社+α文庫)。 著者の苅谷剛彦氏は、東京大学教授を経て、現在はオックスフォード大学教授として教壇に立つ。
デマや陰謀論にハマりやすい「単眼思考」を抜け出し、自らの頭で考えられるようになるため、本書のポイントを5回にわたって紹介する。
知的複眼思考への招待
「君は、ものごとを単純にとらえ過ぎていないか。ものごとには多様な面があるはずだ。だから、もっと違う面にも目を向けなさい」
「あなたの発想は、常識的過ぎる。もっと自分の頭で考えなさい」
「君はひとつの視点にとらわれていて、全体が見えなくなっているんじゃないか」
先生や上司から、こんなことを指摘されたことはありませんか。
そんなとき、「それじゃあ、どうすればいいんだ」「どうすれば、ものごとを多面的にとらえることができるのか」そんな疑問を感じて、具体的な方法がわからないまま、迷ってしまった。そんな経験はないでしょうか。

こんな場面はどうでしょう。
・他の人の意見に対し、「そんなものかなあ」と思って、自分で十分に納得しているわけではないけれど、「まあいいか」とやり過ごしてしまった。
・本当は、ちょっと引っかかるところもあるのだけれど、「そういわれれば、そうかなあ」と、人の意見を消極的に受け入れた。
・「あなたの意見はどうですか」と聞かれたとき、少しはいいたいことがあるのに、はっきりと自分の考えがまとめられずに、結局は「とくにありません」と答えてしまった。
こういった場面を経験したことのある人なら、「できれば自分なりの考えかたやものの見かたを身につけたい」と願ったことがあるでしょう。「自分の考えをはっきりことばに表して相手にわかるように伝えられたら……」と残念に思ったこともあるでしょう。考える力の不足を感じて、悔しい思いをした人も、多いのではないでしょうか。
それでも「どうすればいいのか」、その点になると、よくわからないまま。先生や上司はあなたの欠点を指摘してくれても、「どうすればいいか」、その具体的な方法までは教えてくれない。自分なりに工夫しようにも、その第一歩がわからない。頭ではわかっても、実際にやろうとすると、どうしていいのかわからなくなってしまう。そういう場合も多いのではないかと思います。