2022.02.24
# 勉強法

オックスフォード大教授が教える「エリートは冷たい」は本当か?

名著『知的複眼思考法』に学ぶ(4)

四半世紀もの長きにわたって、若いビジネスパーソンや大学生に読み継がれてきた書籍が、「独学に役立つ名著」として、いま再び注目を集めている。

1996年に刊行された『知的複眼思考法 誰でも持っている想像力のスイッチ』(講談社+α文庫)。著者の苅谷剛彦氏は、東京大学教授を経て、現在はオックスフォード大学教授として教壇に立つ。

ステレオタイプの思考から、複眼思考に変わるためには、どこに気をつけるべきか。連載第4回目は具体例をもとに、そのポイントを紹介する。

エリート校出身者=友だちが少ない?

複眼思考とは何か。それは普通の考えかたとどう違うのか。ここではいくつかの例をあげながら、さらに詳しく説明していきましょう。

私が教えている東大生の中には、いわゆる中高一貫校の出身者が少なくありません。中学校受験を経て、有名な中高一貫校に入ってから東大に来る。その意味で、長い間自分たちと同じような均質的な集団で育ってきた学生たちが多いのです。

このような学生たちは、世間的にいえばたしかに「頭のよい」学生たちなのかもしれません。しかし、学生によっては、なかなか「堅い発想」を持っている場合があります。

たとえば、学生たちと教育の問題を議論しているときのことです。ある学生が次のような発言をしました。

「エリート校の出身者は、幼いときから過酷な受験競争を勝ち抜いてくる。そして、競争の過程で、他人を蹴落としてくる。したがって、友だちを作るのがうまくない」

この主張には、受験教育は競争を促すという「常識」と、受験競争は他人を蹴落とすことになるので、友人関係がうまくいかなくなるという「常識」とが含まれています。

〔photo〕iStock

るほど、世間に流布している受験教育のイメージにしたがえば、このような発想が出てくるのもうなずけます。ほかの学生たちも、この意見に対し、「うん、そうだ」といわんばかりに首をタテに振りながら聞いていました。

しかし、このようなとらえかたは、有名進学校のステレオタイプをもとにしています。進学校を目指して勉強に励む有名進学塾の幼い生徒たち。「必勝」のはちまきをして、テストで1点でも多く取ることを目指す塾の子どもの姿が、テレビや雑誌に登場することがあります。

そうした子どもたちのイメージは、幼いころから競争、競争に明け暮れていれば、自然と友だちもできなくなってしまうだろうという「常識」を作り出します。受験教育が批判される場合に、決まって出てくる常套句ーー「受験を勝ち抜いてきたものは、頭はいいかもしれないが、人間的には冷たい」とか、「受験競争は友人関係を打ち壊す」といった「常識」が、こうした学生たちの意見に反映しているのです。

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