いまさら聞けない、「カザフスタン騒乱」は誰がなぜ、何を目的に起こしたのか

中央アジアを巡る中露のパワーバランス

カザフ動乱の背景

カザフスタンでは年初から大きな政変が起こったが、この事態をどう見ればいいのだろうか。

まず前提として、カザフスタンが中央アジアを代表する大国であることを知っておきたい。タジキスタン、ウズベキスタンなど似たような名前の国は他にもあるが、国土面積からして規模が全然違う。旧ソ連ではロシアに次ぐ大きさで、日本の約7倍もある。石油・天然ガスなどの鉱物資源が国の産業の中心に位置し、一人当たりGDPは9000ドル程度で、それなりの豊さを享受している。

旧ソ連の一員という歴史的背景もあってロシアとの関係が深いが、近年は経済力をつけてきた中国との関係も強まっている。2013年に中国が「一帯一路」構想を発表したのはこのカザフスタンの地であったことも覚えておきたい。

ソ連末期の1990年からナザルバエフが同国の独裁者として君臨してきた。2000年から2008年にかけては石油や天然ガスの価格が高騰していたため、極めて楽な経済運営となっていた。これによってナザルバエフに対する国民の支持も強まった。だが、リーマンショック以降は資源価格が低迷する時代が続き、ナザルバエフに対する信頼も失われていった。

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カザフスタンの現在の首都の名前は「ヌルスルタン」だが、これはナザルバエフの名前である。例えて言えば、岸田文雄総理が日本の首都を「文雄」市にするというようなものだ。独裁者ゆえにできることであり、国民が密かに反発するのは当然だろう。

2019年にはトカエフが新大統領に就任したが、軍を掌握する安全保障会議議長としてはナザルバエフが引き続き残留する形であるだけでなく、「終身議長」とされてきた。つまりトカエフは「看板」にすぎず、ナザルバエフが相変わらず実質的な権力者としての地位を保持していた。

 

今回の政変は、天然ガス価格が自由化されたことがきっかけとなった。天然ガスの国内価格を統制してきた結果として国際価格との乖離が大きくなり、ガス価格は2倍程度に広がっていた。国内企業は生産した天然ガスなどを闇市場を通して輸出に回し、国内向けの供給を絞ってきた。このため国内では天然ガスが供給不足状態にあり、これを解消するために価格の自由化に踏み切った。

その結果、価格はこれまでの2倍以上になった。カザフスタンでは自動車用の燃料としてはLPG(天然ガス)が圧倒的に使われているため、今回の大幅値上げが庶民の怒りを買うことになり、大規模なデモに発展したのだ。

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