地球の中身はなんだろな? マントルの底、深さ2900kmの鉱物にタッチする!
カギを握るのはダイヤモンド地球科学というと、「フィールドワーク」というイメージが強いかもしれません。とくに岩石や地質についての研究をするには、山や川はたまた海へ出かけて、おもしろい岩石を採取したり地層の観察をしたりする必要がありそうです。
しかし、フィールドワークではどうしても手の届かない領域があります。「地球の中身」です。じつは、人類は地殻を掘り抜いてマントルに到達したことすらありません。
にもかかわらず、地球内部の様子が描かれた絵をよく見かけます。物の本には、「マントルはカンラン岩できている」とか「コアは鉄でできている」などと書いてあります。こうした事実を明らかにしたのは、地球科学界の「椅子の男(guy in the chair)」、つまり実験室を主戦場とする地球科学者たちでした。
近年、画期的な実験結果をいくつも報告してきた、日本地球科学界を代表する「椅子の男」が『地球の中身——何があるのか、何が起きているのか』(講談社ブルーバックス)を上梓しました。実験室を主戦場とする地球科学とはどのようなものか、解説していただきましょう。
地殻は近くにある
地震波の観測により、地球の内部はおおまかに地殻・マントル・外核・内核の4層に分けられることがわかる(図1)。

また、外核は液体で、ほかの3つの層は固体であることもわかる。しかし、各層を構成する物質についてくわしく知るためには、地震波観測だけではなく、より直接的に観察したい。
いちばん外側の層、地殻の物質(岩石)は地表で比較的簡単に手に入る。ただし、日本のように植生の豊かな土地は、土に覆われているため地殻の露出している領域は狭い。
そもそも土と岩石は別物である。土は、地表の岩石が水などの影響でボロボロになり(「風化」という)、生物由来の物質(有機物)と混ざり合うことで形成される。土を剥いでいくと、やがて岩石の層にぶつかる。そこからが地殻だ。
以上は陸の地殻の話だが、海でも同様である。海底には地殻があるが、その上を堆積物(陸上から運ばれてきた物質や海洋生物の遺骸、排泄物など)が覆っている。それらを剥ぐことで、ようやく地殻(岩石)とご対面だ。
地殻は岩石であるというが、岩石とはなんだろうか。ざっくりと言えば、「鉱物の集合体」である。
じゃあ、鉱物とは何か——さまざまな原子ががっちりと結合してつくる結晶だ。化学組成や結晶構造はさまざまで、それらのちがいにより鉱物は分類される。そして、構成する鉱物により岩石は分類される。