2022.01.27

地球の中身はなんだろな? マントルの底、深さ2900kmの鉱物にタッチする!

カギを握るのはダイヤモンド

「大陸」とは

さて、先に述べたとおり、地殻の岩石は比較的手に入れやすく、よく調べられている。そして、大陸と海(の下)とでは、地殻が別物であることがわかっている(大陸地殻と海洋地殻は明確に区別される)。

ここで注意したいのは、「大陸」という言葉の使い方である。一般的には、文字どおり「大きな陸地」を意味し、ユーラシア大陸や北米大陸などを指す。

地球科学においては、「大陸地殻」こそが大陸であり、これは必ずしも一般的な「大陸」とは一致しない。つまり、大陸地殻と海洋地殻の境目は、世界地図を見るだけではわからないということだ。

日本列島は陸地面積としてはそれほど大きくないので、一般的には「大陸」とは呼ばれない。しかし、大陸地殻から構成されているので、地球科学的な見方では立派な大陸である。じつは、もともとユーラシア大陸の一部だったが、大陸から剥がれて列島となったのだ(図2)。

【図】日本海の誕生と拡大図2 日本海の誕生と拡大。日本海は約2500万年前に誕生し、その拡大とともに日本列島が大陸から離れ、中部地方を中心に折れ曲がった(『地球の中身』より)

大陸と海のちがい

くり返しになるが、大陸地殻と海洋地殻はまったく別物だ。構成する岩石の種類が異なる。また、層としての厚さが異なる。そして、古さも異なる(地殻の年齢については、本稿では説明を省く)。

大陸地殻と海洋地殻のちがいを簡単にまとめた図3を見てほしい。

【図】大陸地殻と海洋地殻 図3 大陸地殻と海洋地殻

大陸地殻を構成するのはおもに花崗岩で、海洋地殻はおもに玄武岩から成る。いずれもマグマが冷え固まってできる岩石だが、もとになるマグマの性質と冷えるスピードが異なる。花崗岩は、水を多くふくむ比較的低温(700~800℃)のマグマが、ゆっくりと冷え固まったときにできる。玄武岩は、水をあまりふくまない高温(噴火時に1200℃くらい)のマグマが、急激に冷え固まってできる。

構成する岩石のちがいは、大陸地殻と海洋地殻の密度のちがいを生んでいる。大陸地殻の密度は1立方センチメートルあたり約2.7グラム、海洋地殻は約3.0グラムだ。大陸地殻は軽く、海洋地殻は重い。

密度のちがいも関係するが、大陸地殻と海洋地殻では厚さに大きな差がある。海洋地殻はどこでもほぼ同じ厚さで、約6km程度だ(地球半径の約1000分の1に相当する)。大陸地殻は場所によって厚さにばらつきがある。おおざっぱにいうと、高い山の下の大陸地殻はぶ厚い。平均すると30km程度だ。

マントルが地表に現れる場所

以上のように、地殻については比較的理解が進んでいる。その下のマントルはどうだろう。地殻の下に隠れていて、観察するのはなかなかむずかしそうだ。

しかし、マントルが地表に露出している場所もある。プレートどうしが衝突していて、めくれ上がっているところだ。

プレートというのは、地表を覆う十数枚の硬い岩板のこと。地殻とマントル最上部をふくみ、その下のいくらか流動性のある領域と区別される。

プレートはそれぞれ異なる向きに運動しており、そのため、ところどころで衝突している。衝突の結果、一方のプレートがめくれてしまい、そのプレートを構成するマントル最上部が地表に露出することがある(図4)。日本列島でも、千葉県の鴨川や北海道の日高山脈ではプレートがめくれ上がっていて、マントルの岩石が地表に現れている。

【図】プレートのめくれ上がり図4 プレートのめくれ上がり。北海道の日高山脈では、片方のプレートがめくれ上がり、マントルの岩石が地表に現れている(『地球の中身』より

こうした場所で見つかるマントルの岩石はカンラン岩という。これは、ウグイス色(オリーブ色)の綺麗な鉱物(カンラン石)を主体とする岩石である。日高山脈の幌満岩体のように、風化の進んでいないマントルが観察できる場所では、このウグイス色の岩石が手に入る。

なお、カンラン岩の密度は1立方センチメートルあたり3.3グラム程度。マントルは地殻よりも重い岩石で構成されている。

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