岸田内閣「新しい資本主義」が話題の一方、多くの人が誤解している「資本主義とは何か」

広井 良典 プロフィール

では資本主義とは何か。議論を急ぐことになるが、資本主義についてのもっとも純化した把握として、

資本主義=「市場経済」プラス「限りない拡大・成長」を志向するシステム

という理解が本質的なものになると私は考えている(前掲拙著参照)。

ここでのポイントは、まず資本主義とは単なる市場経済とは異なるという点であり、これは上記のとおりである。では資本主義と市場経済が異なる点は何かというと、それは「限りない拡大・成長への志向」という要素に行きつくだろう。

つまり、単なる市場経済あるいは商品・貨幣の交換ではなく、あくまでそうした市場取引を通じて自らの保有する貨幣(そのまとまった形態としての資本)が限りなく増加することを追求するシステム、これが資本主義についての基本的な把握になる。言い換えれば、単なる市場経済ではなく、それが「拡大・成長」への“強力なドライブ”と一体となって作動する時、はじめて資本主義として立ち現れることになるのだ。

 

こうした点に関連し、世界システム論で知られるウォーラーステインは次のように論じている。

「資本主義は、利潤獲得を目的として市場での販売のために生産を行う諸個人ないし諸企業の存在だけで定義されうるものではない。……無限の資本蓄積を優先するようなシステムが現われてはじめて、資本主義のシステムの存在を言うことができる。この定義を用いると、近代世界システムだけが、資本主義的なシステムであるということになる。」(ウォーラーステイン『入門世界システム分析』、強調原著者)

そして、以上のように資本主義を把握するならば、もしも「限りない拡大・成長」という目標を捨て、地球環境や資源の有限性を踏まえつつ、拡大・成長よりも「持続可能性」に価値を置いた社会システムを構想するとすれば、定義上それはすでに「資本主義」ではない、ということになるだろう。

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