岸田内閣「新しい資本主義」が話題の一方、多くの人が誤解している「資本主義とは何か」

広井 良典 プロフィール

「資本主義の多様性」と進化

以上は資本主義に関するもっとも基本的な議論だが、次にもう少し資本主義の歴史的進化や変容をめぐる現実的な議論に歩を進めてみよう。

まず、「資本主義」と一口に言ってもそれはきわめて「多様」であり、この点については(図1)を見てほしい。

図1
 

これは、いわゆる先進主要国の経済格差(所得格差)を示したもので、格差の度合いを表す指標であるジニ係数(値が大きいほど格差が大きいことを示す)の順に左から右に並べているものだが、国によって大きな違いがあることが示されている。

大きくは、ノルウェー、デンマークなど北欧諸国がもっとも経済格差が小さく(つまり平等度が高く)、次いでオーストリア、ドイツ、オランダ、フランスなど大陸ヨーロッパ諸国が比較的平等であり、しかしギリシャ、ポルトガルなど南欧諸国になると経済格差が次第に大きくなり、イギリスそしてアメリカに至るともっとも経済格差が大きいことが見てとれる。

ちなみに日本は、以前は大陸ヨーロッパと同程度の平等度だったが、90年代頃からこのグラフの右のほうに徐々にシフトし、つまり次第に格差が拡大し、現在では先進諸国の中でもっとも格差が大きい部類に属しているのである。

後の議論ともつながるが、日本において格差が大きくなっているのは、政府による税や社会保障を通じた「再分配」が弱い(あるいはそれに対する社会的合意が弱い)ことが背景にある。

いずれにしても、このように「資本主義」と言ってもその内容は国によって非常に多様であり、これはいわゆる「資本主義の多様性」(Varieties of CapitalismまたはDiversity of Capitalism)と呼ばれるテーマとも関係している(Bruno Amable, The Diversity of Modern Capitalism, あるいはHall and Soskice, Varieties of Capitalismなど)。

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