岸田内閣「新しい資本主義」が話題の一方、多くの人が誤解している「資本主義とは何か」

広井 良典 プロフィール

では、なぜこのように同じ「資本主義」の国でありながら、格差や平等をめぐる状況がこれほど違うのか。その主要な原因は、社会保障を軸とする「福祉国家」的な再分配を政府が積極的に行っているか、そうしたことを極力行わず市場の自由放任に委ねているかという点にある。

言い換えれば、概してヨーロッパに一般的な“福祉国家的な資本主義”か、アメリカのような“純粋な資本主義”という大きな相違があるわけで、こうした点を捨象して単純に「資本主義の是非」を論じるような議論は百害あって一利なしと言うべきだろう。

特に日本の場合、メディアを含めて余りにもアメリカの情報に偏りすぎており、「資本主義=アメリカ的な資本主義」ということが半ば自明のものとして議論されている。もっとヨーロッパの社会モデルや政策展開に目を向けなければいけない

なぜなら、先ほどの「環境」や「持続可能性」をめぐる展開もそうだが、これまでの日本での通念とは真逆に、むしろヨーロッパの社会モデルのほうが“進んだ(より進化した)”資本主義の姿を示しているからだ。

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ちなみに、特に第二次大戦後に顕著になった以上のような「福祉国家」あるいは「政府による積極的な再分配」という政策展開は、いわゆるケインズ政策の理念と重なっており、社会主義ないしマルクス主義陣営からは“修正資本主義”と呼ばれ、かつ「資本主義の延命策」として批判されたことも想起しておきたい。「資本主義の延命策」という意味は、それは不十分な対応に過ぎず、“生産そのものを市場ではなく政府が管理する”システムとしての社会主義がやがて取って変わるという意味においてだった。

いずれにしても、こうした“ケインズ主義的福祉国家”は、市場経済の自由放任ではなく、所得再分配や公共事業などを通じ、政府が積極的にそれに介入する(かつそれを通じて経済成長を実現させる)というものであり、資本主義の中に社会主義的な要素を取り入れたシステムだったと言える。実際、それは資本主義と社会主義の「中間の道(the middle way)」と呼ばれたのである。

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