ショルツ首相には渡りに船
先週の本コラム(ワシントンデビューのベアボック外相を悩ませる「ドイツの深刻なエネルギー事情」)で紹介した通り、ドイツの新政権で注目を浴びているのが、緑の党のダブル党首、アナレーナ・ベアボック氏(41歳・女性)とロバート・ハーベック氏(52歳・男性)だ。
ベアボック氏はドイツ初の女性の外務大臣で、ハーベック氏は、新しく設立された経済・気候保護大臣。後者は、気候政策と経済発展を両立させるための省で、しかも、全ての省庁より多めの権限を持つスーパー省になるらしい。

新政権は、地味なショルツ氏が率いるSPD政権だが、彼らが年末に発表したスローガンが、“Mehr Aufbruch wagen!” 「より多くの新しいことに臨む!」である。国民は、16年にわたるメルケル政権にうんざりしており、新しいものを求めている。
ところが、間の悪いことにショルツ首相は先の選挙戦で、国民は変化よりも安定を求めていると勘違いし、「メルケル政治の後継者」を謳ってしまった。メルケル人気にあやかろうとしたのだろうが、そうでなくてもSPDには、CDU施政16年のうち12年も連立を組み、唯々諾々と従ってきたというイメージがこびりついている。
特にショルツ氏はついこの間までメルケル内閣で副首相と財務相を務めていたのだから、今さら、刷新だの勃興だのといっても、なかなかうまくいかない。そこで、この緑のコンビに長いリードを付けて、前面に押し出したのかもしれない。
二人ともモチベーションが高そうで、マスコミ受けも良いので、作戦としては上々だ。特にエネルギー問題は八方塞がりになっているから、ハーベック氏が引き受けてくれれば渡りに船。失敗したなら、ついでにその責任も取ってもらう魂胆か?
緑の党で先の選挙を率いたのは、女性という特典を持つベアボック氏の方だったが(緑の党では女性の地位の方が男性よりも高い)、組閣人事においてはハーベック氏が、副首相の座と、スーパー省である経済・気候保護省を手にした。
ただ、これがはたして幸なのか、あるいは、貧乏籤なのかは、まだわからない。