“失敗しない、負けない”イメージを削ぐ

1月13日より世界同時配信されたNetflixシリーズ「新聞記者」が、韓国ドラマやアニメなどの人気作をおさえ、日本のデイリーランキングで1位となり、早くも話題だ。本作は第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか、3部門を受賞した大ヒット映画『新聞記者』(2019)に続き、藤井道人監督が手掛けた。実際にあった政治スキャンダルを題材とし、新たな物語として、より多角的な視点を織り交ぜて作り上げている。

 

米倉涼子さんが演じるのは、“新聞業界の異端児”と呼ばれる主人公・松田杏奈。政府が起こした国有地払い下げや公文書改竄などの真相を追求し続ける役どころ。また、政府という大組織に翻弄される若手官僚を綾野剛さん、新聞配達をしながらも政治に関心の薄い就活中の大学生を横浜流星さんが演じている。

監督を務めた藤井道人さんは、映画『ヤクザと家族 The Family』やドラマ『アバランチ』など話題作を手掛け続ける気鋭の映画監督。藤井組との初タッグを「本当にツラかったし、毎日戸惑っていました」と振り返ったように、米倉さんのパブリックイメージでもある、“失敗しない、負けない”といったストレートな強さや圧倒的に華やかな存在感は本作では鳴りを潜めている。

「今まで私が演じてきた役柄のイメージでいえば、失敗しない、負けない、あとは悪女? あたりですかね。いつものように演じようと思えば簡単にできてしまったけれど、藤井監督から求められたのは抑えて削ぐ芝居。作中にある官房長官とのシーンはもっと強さを押し出した演技をしていたんですが、出足から『優しい松田さんでいてください』とリクエストがありました。勢いを抑えて、力を抜いて発言するので、相手に自分の思いが伝わるのか不安で仕方なかった。歩き方も歩幅を小さくして、なるべくカッコつけないように。松田杏奈という役は、普段の自分の芝居とはまったく違うところから出てくるキャラクターで難しさに打ちのめされるばかりでした

官房長官の定例会見で鋭い質問を投げかける新聞記者・松田杏奈。