「鎌倉幕府が成立した時期は、何を大事にするかによって違ってくる」ということがあらためて確認されるばかりである。
1185年説にはかつて大きな根拠があるとおもわれていたようだが「以前は魅力的だったが今はとても古びてしまった説」だとおもったほうがいいだろう。
鎌倉幕府1192年で覚えた人は、その記憶を変えなくていいということでもある(少なくとも1185に変えることはやめたほうがいい)。
太平洋戦争とのアナロジー
当書は、いろんな学説を引き合いに出して展開していくが、べつだん堅苦しい学術書というわけではない。
読みやすい。
けっこう気に入った「表現」があったので、二つだけ紹介したい。
ひとつは源頼朝の挙兵が「伊豆の目代屋敷の襲撃」だったことについて。
「頼朝が挙兵の準備をしている」というのはもともと政府側(平家側)には筒抜けであったらしい。蜂起を予想して準備していたはずなのだが、でも目代(山木兼隆)の屋敷はかなり無防備で、たやすくやられてしまう。
このことについて、以下のように説明してあった。(本書50p)
「(平家方のリーダーである大庭)景親も頼朝が挙兵することは予測していたが、攻撃目標がつかめなかった。日本が対米開戦することは分かっていたが、フィリピンなど東南アジア方面を攻撃すると想っており、真珠湾攻撃を許したアメリカのようなものである」
きわめてわかりやすい。昭和16年のアメリカの気分も知れて、おもしろい。
もうひとつ。