2022.02.11
# 映画

「怪獣造形の専門家」が語った、特撮文化の苦境とそこにある「希望」

新しいスタイルの怪獣映画を待ち望む
武井 保之 プロフィール

ハリウッド版『ゴジラ』シリーズをはじめ、日本映画でもほとんどのキャラクター表現がデジタルの3DCGに変わっていくなか、今回のお話をいただいた時は、なぜ僕に造形依頼が来たのか最初は不思議に思ったんです(笑)。

でもそうは思いながら、オファーをくれたのは東映で特撮を長年されてきた今作の特撮監督の佛田洋さんで、着ぐるみから最先端のCG撮影までをご存じの方ですから、やはりうれしかったですね。

ただ怪獣が歩いたり、ビルを破壊したりするわけではなく、生きている場面はないので、怪獣の死体をなぜデジタルではなくて造形で作るのかという疑問はありました。

――なぜ若狭さんの力が必要だったのでしょうか。

今作には、佛田さんのほかに特殊効果を仕切るVFXスーパーバイザーの野口光一さんがいるため、デジタルで怪獣を作ること自体は決して難しくはないわけです。

しかし、最初の怪獣デザインの段階で、いろいろ描いても、三木聡監督からなかなかOKが出ない。監督が頭のなかで思い描く怪獣を具体化するためには、立体で実際に作りながらイメージを明確にしていく方がいいということになり、僕に白羽の矢が立ったそうです。

松竹提供
 

「ゴジラの重み」から解放された

――長年にわたり『ゴジラ』シリーズで怪獣造形を手がけられてきましたが、本作の希望とゴジラの差別化は意識されましたか?

僕自身がゴジラ本体をずっと作ってきた人間です。ゴジラ本体の造形を5回、ゴジラが登場する怪獣映画全体の造形を10回以上手がけてきましたから、ゴジラに関しては誰よりもよく知っている日本人でしょう。ですから、最初から最後まで「ゴジラから離れないといけない」というのは強く意識していました。

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