2022.02.11
# 映画

「怪獣造形の専門家」が語った、特撮文化の苦境とそこにある「希望」

新しいスタイルの怪獣映画を待ち望む
武井 保之 プロフィール

40年の節目に巡ってきた仕事

――怪獣ファンには希望のどんなところを見てほしいですか?

今まで以上に大きいスケールですかね。これまで造形の長年の歴史のなかでは、ミニチュアのビルや街並みと対比した時のサイズ感のため、全長50〜100メートルくらいが怪獣の相場でした。しかし今作の希望は、荒川の真ん中に横たわっているという設定であり、航空写真から川に対するサイズを計算した結果、全長400メートルという従来の怪獣の2倍近い大きさになったんです。

大きくなっても全体のプロポーションはあまり変わりませんが、それだけのサイズ感を出そうとすると、表皮の表現とかパーツのテクスチャーがいつもと同じままでは見劣りします。そこは細かく彫刻をしたり、形状をいろいろ工夫しました。

僕も佛田さんもこれまでに何百体という怪獣を見てきたので、400メートルに見せるためには、やはり実物のスケールも大きくしないといけないとわかっています。ですから、従来の着ぐるみの倍くらいのサイズの模型を作りました。

撮影にも使われた巨大ミニチュアの「希望」(松竹提供)
 

――若狭さんにとって今作は、実に18年ぶりの怪獣造形になりました。またこの先いつ造形の仕事があるのか、もしくはもうないのか、わかりません。それだけに今作への思い入れも深かったのではないですか?

最初にお話をいただいた時は、2020年公開予定でした。僕が会社から独立して造形の仕事を始めたのが1980年でしたから、ちょうど40年になる節目の年で、さらにタイトルが『大怪獣のあとしまつ』。僕がやってきたこの仕事も後始末の時だなと、自分自身にとってこんなに運命的ですばらしいタイミングはないと思いました。

40年もこの世界で働くことができ、そして40年目に久しぶりに怪獣を作ることになったのはうれしかったです。

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