最も多い回答は6歳〜7歳で「恥ずかしい」
今回の指針見直しは実に70年ぶり。様々な意見はあるが、注目したいのは、令和元年に行われた厚生労働科学特別研究事業の調査『子どもの発育発達と公衆浴場における 混浴年齢に関する研究 』が根拠になっている点、実態調査がベースになっていることだ。
まず『子どもに混浴させた経験がある』と答えた大人は、全体の56.4%と半数以上にのぼった。ただ、この中には家庭の事情等で、異性の親が一緒に入浴せざるを得ないケースも含まれるだろう。
一方、子どもたちはどう感じているかというと、混浴について保護者の同意の下で全国の7歳から12歳まで男女1500名に調査を実施したところ、異性混浴を『恥ずかしい』と思い始めた年齢は、6歳と回答した子どもが27.0%、7歳と回答した子どもが21.2%だった。つまり、両方を併せると約半数の子どもが、6、7歳から混浴を恥ずかしいと思い始めていることがわかったのだ。こうした子ども側の認識を重く見て指針が改変されたことは、「評価できる」と今西さんは話す。
では、子どもの発達という点から見ると、混浴は6歳までという年齢制限は妥当なのだろうか。
「体の発達には個人差もありますが、一般的には、男性、女性としての第二次成長が現れるのは、男子では10歳から13歳、女子では8歳から12歳くらいとされています。加えて、1946年の改正時に比べると、現代の子どもの体の成長は、総じて低年齢化してきていることは明らか。個人的には、もっと年齢を引き下げてもいいんじゃないか。あるいは、いっそ混浴をなくした方がいいという考えです。
小児性愛者の中には、かなり低年齢の子どもに興味を持つ者もいます。性被害というのは、のぞきであっても、被害者の心を深く傷つける暴力になります。子どもの頃に受けた傷は、心の傷も含めて大人になってもトラウマとして残り、被害者を苦しめます。小児性被害は社会問題の一つという認識を持つことが大事です」と、今西さんは警鐘を促す。
なお、前出の研究では、「園児や児童の性に関する意識や実態に関する調査」も行われ「4~5歳児に男女の体の違いの意識が明確になり、小学2~3年生で性の興味関心から知識を得ようとする行動がみられた。そのため、早ければ4~5歳から男女別の着替えや性教育が必要であることが示唆された」という記述がある。

今回、周囲の女性にも聞いてみたが、子ども時代、異性の大人と入浴するのは嫌だったという声は多かった。
Aさん(50代)。父親が「家族円満の秘訣は、家族揃っての入浴」と、大きめの自宅風呂で毎晩家族入浴していたそうだ。また、父親と兄と3人でよく登山をし、下山後、温泉に立ち寄った。小さかった彼女は男湯に入らざるを得なかった。「ものすごく嫌でした。家族入浴も、小学2年生ぐらいからは抵抗がありました。でも、恥ずかしくて反発できず、4年生まで入浴していました。私のように言い出せず、嫌悪感を抱いている子どもがいることを大人に理解してほしいです」と語った。
一方、Bさん(40代)は、子どもの頃に、叔父が家に遊びにきた際、母親に「今日は叔父さんとお風呂に入りなさいね」と言われたことがある。当時の年齢は、小学校4年生。胸も大きくなってきていて、父親と入浴することも恥ずかしく感じる年頃だった。まして叔父さんとなんて、死ぬほど嫌だと感じたそうだ。ただ、子どもながらに「自分が嫌がると、両親が困るかも……」と気遣ってしまった。あの時を振り返って、「母親には、まず子どもの気持ちを聞いて欲しかった。叔父さんたちも断って欲しかった」と話した。