ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」(日本テレビ系)は昨年10月から放送され、スーパー塾講師・黒木蔵人を演じた柳楽優弥さんをはじめ、子役や保護者役のリアルさに注目が集まった。高瀬志帆さんの原作漫画は連載が続き、リアルな中学受験も東京都の2月入試本番に向け、前受けや心身の健康管理など、緊張の日々が続く。
柳楽優弥さんのインタビュー記事への反響から始まったこの連載では、「課金ゲーム」「大学系列校」「鉄道オタク」「帰国生」「御三家」「地方での受験」「塾の合格実績」「無料塾」「小6ママの震え」「個別指導と集団塾の併用」「1年で行った都立中高一貫校」といった体験談を紹介。最終回の今回は、ドラマでジャニーズJr.の羽村仁成さんが演じる「開成中を目指す島津くん」も受験した、愛知県の全寮制中高一貫校について。偏差値71の特別給費生枠があり、東京でも受けられるとあって注目されている。全寮制の中高一貫校は、どんなところなのだろうか。この学校を卒業し、京都大学に進んだ後、医大に入り直したJさん(28)に伺った。
親に勧められた中学受験、全寮制を選択
愛知県蒲郡市にある「海陽中等教育学校」は、東海旅客鉄道・中部電力・トヨタ自動車などの企業が中心となって設立し、2006年4月に開校した中高一貫の男子校だ。イギリスのイートン校をモデルにしており、寮のことを「ハウス」、寮監のことを「ハウスマスター」と呼ぶ。科学の甲子園全国大会の常連校で、他に数学や情報などのオリンピックでも活躍している。

京大を経て、関東地方の医大に入り直した医学生のJさん(28)は、海陽の一期生だった。全寮制を選んだのはJさん自身だが、中学受験は、医師の両親に勧められたという。
「両親は公立中に通ったので、より良い環境の私立に行ってほしかったみたいです。大手塾には、小4から電車で通いました。本当は、勉強があまり好きではなくて、塾に行きたくなかったです。学校のクラスでも数人しか塾に行っていないし、遊びたいのにと思っていました。でも、この時は親にレールを敷かれて良かったです。海陽に入ったから、京大に進むきっかけになった先生に出会えました」
Jさんは中学受験の志望校を決める際、「寮生活をするのもいいかな」と思い、塾の先生に聞くと、関東近郊にある全寮制の学校をいくつか勧められた。全寮制の入試は、東京・神奈川の2月受験より早く、「1月受験で決めたい」という思いもあった。
「塾の先生は、愛知に海陽という全寮制の学校が開設するよって教えてくれました。普段の成績は、海陽に合格する目安の偏差値50に届かなかったんですが、1月に受けて合格しました。2月に受けた自宅近くの私立は、不合格でした。受かっていた海陽に、進学を決めました」
近年は、函館ラ・サールや早稲田佐賀といった全寮制の学校も人気で、首都圏で受験できる。一般的な寮生活は、スマホ・ゲームの使い方や、感染症対策など、集団生活の大変さもある。6年間の寮生活を始める際、「長い修学旅行になるな」と思うぐらいで、抵抗感はなかったというJさん。
「1学年は120人ほどで、全員が寮に入り、1人1部屋あります。朝6時半に起床し、7時に点呼、食事をして8時半から学校。昼は食堂で食べます。寮の中にフロアマスターという大人が駐在していて、各企業から1年ずつ来ます。30歳ぐらいで、みんなのお兄さんという感じでした。中学生には生活のサポートをして、高校生になると勉強の相談にのってくれます」