海城高校出身の浪人生が起こした「金属バット殺人事件」の悲劇的な結末

「教育虐待」とは何か【後編】

「クズだ」「出て行け」

前編では「医学部9浪女子、母親バラバラ殺人事件」における親子の悲劇的な「教育虐待」を見てきた。親の過度な教育がいかに子供を傷つけ、悲劇をもたらすかがわかるのではないだろうか。

考えてみれば、教育虐待が発端となった事件は数十年前から起きていた。有名なのは1980年に起きた海城高校出身の浪人生による「金属バット両親殺害事件」だろう。

Photo by GettyImages
 
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東大卒の父親と専業主婦の下で、Aは次男としてエリート街道を歩まされてきた。長男は一流私立大学へ進学したものの、Aは受験に落ちて浪人生活へ。一浪しても志望校に落ちたことから、二浪を決める。

だが、Aの成績は上がらない。Aはだんだんと勉学に力が入らなくなり、酒を飲むなどするようになり、親との諍いも絶えなくなる。そしてある日、父親から「クズだ」「出ていけ」などと罵声を浴びせられたのをきっかけに、Aは大量の酒を飲み、金属バットで両親を撲殺した。

教育虐待がもとなって複数の犠牲者が出た事件として有名なのが、2006年の奈良高校生放火殺人事件だ。医師である父親は、息子のBに自分と同じように医師になるように命じ、成績が悪いと虐待をした。離婚後、父親はBの親権を持ち、同僚の女医と結婚。そこでも教育虐待を繰り返した。

Bは実母や実妹との連絡を絶たれ、父と継母、それに二人の義理のきょうだいの中で、必死になって医師になるべく日夜勉強を強いられる。そうしたストレスによってBはつぶされ、ある日「もう耐えられない」と感情を爆発させ、家に放火。父は不在で助かったが、家にいた継母と義理のきょうだいたち3名が死亡することになった。
逆に、親が教育虐待をエスカレートさせるあまり、わが子を殺害してしまう事件もある。

最近でいえば、2016年に愛知県で四十代後半の父親が、中学受験を控えた小学六年生の息子を刺殺するという事件を引き起こした。父親は日常的に包丁を向けて勉強をさせており、この時は問題がうまく解けないことにいら立ち、衝動的に殺害したとされている。

さらに2018年には、東京都目黒区で5歳女児虐待死事件が起きている。30代の父親が、小学校に入学する前の5歳児の義娘にスパルタ教育をしたばかりか、モデルになれといって過度な食事制限を強制した。これによって娘は栄養不良に陥り、亡くなったのである。

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