安易に部屋を契約してしまったことを後悔した鈴木さん。入居する前に、母が言ったことが思い出された。
「敷金礼金がないのはありがたいことだけど、本当に大丈夫なの? そこから引っ越すときに大変だったりしない?」
結果として、母親が心配していた通りになった。通常の敷金礼金を払っていれば、保証金とは別に原状回復費用を請求されることもなかったはずだ。まだ入社1年目で十分な貯金もない鈴木さんは、残りの契約期間もこの部屋で暮らすしかなかった。

どうすれば未然に防げるのか?
「敷金礼金0円」「インターネットが無料で使い放題!」という文言に踊らされて、契約書をよく読まずに部屋を決めてしまった鈴木さん。「身から出た錆」と言えばそれまでだが、似たようなケースは後を絶たないという。そこでこのような不動産業者の行いが法律的に許されるものなのか、日本橋浜町法律事務所の奥村剛弁護士に聞いた。
「インターネットの利用に重大な支障があると知りながら、不動産業者が借主を騙すつもりであえて広告に『インターネットを使い放題』と掲載して契約させたのであれば、詐欺に当たる可能性があります。ただ、実際に騙す意思があったことを立証するのは難しいでしょう。
また『保証金』について、不動産業者が、原状回復費用に充てることができない趣旨のものであることを説明しなかったのであれば、重要事項の説明義務違反に当たる可能性があります。今回の『保証金』は、賃貸借契約に基づいて借主が負うことになる金銭債務(賃料債務等)を担保するためのものではないようですので、『敷金』というよりもむしろ『礼金』や『権利金』に近い性質のものではないでしょうか。