67歳の母が2か月で「要支援2」から「要介護4」に悪化…コロナ禍の精神科病院で起きた悲劇
近年、社会問題となっている、若くして祖父母、両親の介護を担わざるをえなくなった「ヤングケアラー(若者介護者)」の存在。奥村シンゴさんの『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』は、みずからの壮絶な体験をもとに、この問題に鋭く迫った一冊だ。
そんな奥村さんが経験した、コロナ禍での母の介護。前編〈「ここにいたら歩けなくなる」精神科病院に予期せぬ入院をした67歳母が怯える「不安な環境」〉で述べたように精神科病院の「隔離室」に入院せざるを得なかった彼女にふりかかった、さらなる悲劇とは。
病棟を移るも、自由に連絡も取れない
母親は、腹痛や便秘がやや改善し慢性期の高齢者閉鎖病棟に移りました。
私は、「母親とようやくある程度自由に電話ができる」と期待しましたが、病院側からまさかの「携帯電話は持ち込み禁止です」との通達。
「急性期から慢性期に移行した患者が、なぜ携帯電話が利用できないのですか? 病棟内は、医療器具の誤作動などが発生するので理解します。せめて、デイルームや食堂などで携帯電話が利用できるようにしていただけませんか?」
主治医は、「この病院のルールですからね。変わることはありません」と素っ気ない返答。

精神保健福祉法では、患者の通信について下記と定めています。
しかしながら、母親が入院する精神科病院の連絡手段は、患者が病室から病院の公衆電話まで行かないといけないのです。認知症で電話の操作が難しい、足腰が不自由で移動困難な患者は職員が付き添います。
マンパワー不足でコロナ対策に時間を割かれる精神科病棟にしては非効率なオペレーション。患者側からみれば、職員がそばにいると精神的に落ち着かず、だんだん面倒になり連絡しなくなる人もいるのではないでしょうか。