いじめられた側が不登校を勧められる現実

日本では、いじめられた側は「無理に来なくていいから」と不登校を勧められるなどし、常に策を講じなくてはならない。そこに登場する「辛いよね。だから逃げていいよ」というやさしい言葉は、実はその対策を被害者側に押し付ける無責任なものにもなり得る。

私たち報道する側も間違っていたのではないか――背筋が寒くなった私は、事実関係を確かめようと過去に書いた雑誌をひっくり返してみた。2000年代に入ってからこれまで小学生の親向けの教育誌、週刊誌などで教育関係の記事を書いてきた。そのなかには、子どものいじめ対策に関するものも多いからだ。

特に忘れられないのは、2007年11月に起きた「いじめ自殺予告騒動」だ。文部科学相宛に、いじめを受けており、状況が変わらなければ学校で自殺するとの手紙が届いた。同じ趣旨の手紙はその後複数届いたが、大半は特定できず、予告者とみられる自死案件はなかった。このころ、福岡県筑前町の中2男子生徒など全国いたるところで中学生のいじめ自殺が相次いだ。

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そこで、私たちは担当していた雑誌で「いじめのサインを見逃さないで」といった特集を緊急企画。子こどものいじめ問題に詳しい専門家に保護者の悩みに答えてもらう記事を載せた。そこにはこんな文章が並ぶ。

Q)「小学校からのいじめが尾を引かないようにするには?」

A)努力しても実らなかったことなんかはどうでもいいんです。いじめられたときの気持ちをていねいに聞いてあげて。

Q)「いじめたり、いじめられたりしていることがわかったとき、どうしたらいいですか?また、いじめに巻き込まれないようにする方法は?」

A)いじめを外に隠さないで、子どもとちゃんと向き合うことが必要。いじめを外に知らせる。一緒に解決することです。

どれもこれも、見事に被害者側へのアドバイスばかりだ。しかも「子どもの抱きしめかた知ってますか?」などと親を追い詰めそうなタイトルまで入れていた。無論、困っているのはいじめられた側なので、こうするしかなかったのだろう。学校や行政に加害者側へのアプローチがあれば、「いじめ加害者へのカウンセリングとは?」といった企画も生まれたかもしれない。それがなかったとしても、いじめた子の親たちへ向けた情報を提供することで何らかの啓もうはできただろう。