昆虫食の研究を行う東京農工大学准教授の鈴木丈詞さんは、昆虫のたんぱく質は、家畜の牛や豚、鶏と比べても引けを取らないと言います。
「昆虫は牛や豚、鶏といった家畜と同等で、2割ほどのたんぱく質を含みます。さらに、乾燥させると濃縮されて、たんぱく質は6~7割になります。いわば『次世代たんぱく質』と言えます」(鈴木さん)
さらに、昆虫には、たんぱく質以外にも亜鉛や鉄分、カルシウム、マグネシウムといったミネラルのほか、ビタミン、不飽和脂肪酸などの栄養素がたっぷり入っています。一方で、糖質が少ないという、とてもヘルシーな食材ということで期待されているのです。


家畜との比較に見る、虫たちの巧みなエコ術
昆虫食の最大の利点は、牛や豚などの家畜と比べて飼育の際の環境負荷が桁違いに小さいことです。コオロギの場合、食べられるようになるまで育てるのに必要なエサの量は、牛と比べると5分の1、水の量は77分の1。さらに、飼育によって排出される温室効果ガスは、なんと1780分の1ほどで済んでしまうのです。

例えば、およそ500匹のコオロギを、ふ化から成虫になるまで育てるのに必要な水の量はわずか500ミリリットルほど、つまりペットボトル1本分で済みます。これは昆虫がわたしたち哺乳類とは異なる仕組みで生きていることに理由があります。
それは、食べ物として取り入れたタンパク質やアミノ酸を分解する過程で出る「アンモニア」の処理の仕方です。哺乳類は、毒性のあるアンモニアを「尿素」に変えて、大量の水を使って、尿として排出します。