旅立つ前に見た、少年の大粒の涙

一度も会話せず、少年のことを何も知らないまま1週間が過ぎた。そして、ルアンパバーンを旅立つ日、私が大きなバックパックを背負って寺院に行くと、いつもの長い廊下に少年はいなかった。

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私は近くのカフェでラオスコーヒーを飲みながら少年を待つことにした。旅立つ前に挨拶をしたいと思ったからだ。30分ほどすると少年がいつもの長い廊下に現れ、私が大きなバックパックを持っていることが分かると、廊下から庭へと裸足で駆け寄ってきた。

少年は私を真っすぐな瞳で見つめながら無言で大粒の涙を流した。一点の曇りもない純粋な瞳を見て、私も涙が出てきてしまった。最後に手を振り合って、私はルアンパバーンからラオスの首都、ビエンチャンへの長距離バス出発地点へと歩いて向かった。

ラオスでは息子が出家する=徳を積むという認識であり、地方から出てきた少年が多い。写真提供/歩りえこ

まだ幼い年齢で僧侶の道に進んだ少年。彼がなぜあの時泣いていたのかは16年経った今でもよく分からない。彼が今でも僧侶として生きているなら26歳くらいになっているはずだ。ごちそうを食べることもなく、女性と触れ合うこともなく、娯楽を経験することもなく、毎朝3時45分に起きて托鉢をするあのままの修行生活を続けているはず。

楽しいことや辛いことの経験、幸せだと感じる瞬間はあるのだろうか? 人は何のために生きているのか? この答えもはっきりしないままだ。

でも、炊き立てのふっくらした白米をふりかけと一緒に食べるあの瞬間……たまらなく幸せだと感じるし、そんな単純で小さな幸せを積み重ねていつの間にかおばあちゃんになっているという人生が意外と幸せなのかもしれない。

ルアンパバーンのメインストリートである「サワンウォン通り」を通行止めにして毎晩開催されるナイトマーケット。写真提供/歩りえこ

ブラを捨て旅に出よう 貧乏乙女の“世界一周”旅行記

費用はたったの150万円という、想像を絶する貧乏旅をしながら、2年間をかけてほぼ世界一周、5大陸90カ国を巡った著者。そのなかから特に思い出深い21カ国を振り返り、襲われたり、盗まれたり、ストーカーをされたり……危険だらけの旅のなかで出会った人情と笑いとロマンスのエピソードを収録。(講談社文庫)

Huluオリジナルドラマ『ブラを捨て旅に出よう〜水原希子の世界一周ひとり旅〜』

©︎Hulu Japan

人生に迷いを感じた水原希子が、突如、世界一周旅行を宣言。原案の実話エピソードをベースとしたストーリー展開を予定しているものの、現地へ赴けばハプニングだらけの珍道中(!?)という半分ドキュメンタリーのオリジナルドラマ。[全6話]