2022.02.16
# 教育

「校則がゆるくても荒れない学校はある」という理屈は、なぜ教師に通用しないのか?

私たちが日常的に行っている会話を記録して丹念に追うことで、人間同士のインタラクションがいかにして成立しているのかを分析するエスノメソドロジーという社会学の研究分野がある。

この手法を用いて、ある中学校の教職員会議に立ち会い、校長や教頭、現場教師たちがいかにして校則や「荒れ」、時間外労働、保護者に対する説明責任についての議論を展開し、何を論拠に語っているのかという「当事者の論理」を明らかにした『学校組織の解剖学』(勁草書房)が刊行された。

意外にも既存の学校組織研究ではこうした視点は抜け落ちてきたものだというが、「教師は現場でこんなふうに理屈を使って動いているのか」という驚きがある。たしかに「校長の権限を強くすれば学校は変えられる」とか「学校は地域などにまで民主的に開いていくべきだ」といった理屈では到達できない“現実”が記述されている。

著者の鈴木雅博・明治大学情報コミュニケーション学部准教授に訊いた。

[PHOTO]iStock
 

教師自身が気付いていないがやっていることを示す

――鈴木先生の研究は従来の学校組織研究では「見落とされてきた」部分に着目したものだそうですが、これまでの研究とはどう異なるのでしょうか。

鈴木 簡単に学説史を振り返ると、教育行政学や学校経営論は、古くは「文部省対日教組」およびそのミニチュア版としての「校長対教師集団」という枠組みで研究がなされてきました。

両者は「校長の権限強化を」「学校を民主的な場に」といったスローガンを主張し合うものでした。かつての学校組織研究の大きな傾向をまとめて言ってしまえば、いずれも「学校はこうあるべき」という方向性を前提にした、規範論的なアプローチだと言えるでしょう。

それに対するある種の反省から、20年ほど前からは、科学的な手続きを重視する計量分析が採り入れられたり、政策過程論などに依拠した事例研究やフィールドワークによる実態調査が積み重ねられてきました。

ただし、方法論が多岐にわたる今日においても、例えば「組織マネジメントの手法で学校現場をどう改善していくか」といった語り方が依然として力を持っています。それらを否定するつもりはないのですが、私は「現実に何がどのように起きているのか」をまずは丁寧に見ていきたいと思っていました。

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