あらゆる物理法則にひそんでいる!宇宙を支配する「定数」とは何か?
単位が続々と再定義されてきた理由とは普遍的な基準を求めて
私たちが質量や長さを測る際には、「キログラム」や「メートル」といった単位を用います。単位の源流となったメートル法は、18世紀末のフランスで生まれました。それ以前は、都市や業種によってさまざまな単位が用いられていたことから、誰もが共有できる「普遍性をもった」単位を定めることにしたのです。
最初に定められたのが、長さの基準となる「メートル」です。メートルは、地球の大きさ(測量結果)をもとに、「赤道から北極までの長さの1000万分の1」として定められました。
次に定められたのが重さの基準となる「キログラム」で、10センチメートル立方、すなわち、1リットル分の水の重さを1キログラムとしました。
これらの単位は徐々に世界に浸透し、1875年に「メートル条約」という、単位統一を目的とした国際条約が結ばれることになります。その際、メートルとキログラムの基準を安定して維持するために、金属(白金イリジウム合金)で両単位の基準が作成されました。それぞれ「国際メートル原器」「国際キログラム原器」として、パリに設立した国際度量衡局で管理することにしました。
単位の基準は「不変」であることがなにより重要です。基準が変わってしまったら、測った結果もズレていってしまいます。国際原器も、当時の最先端の冶金(やきん)工学などを駆使して、決してサビず、摩耗にも強い合金が用いられました。
しかし、人間のつくったものには必ず、劣化や破損のおそれがあります。もっと普遍的な基準というものは存在しないでしょうか。
物理法則の中に現れる「不変の数」
ニュートンが提唱した「万有引力の法則」に代表されるように、科学の進歩にともなって、宇宙のしくみを説明するさまざまな物理法則(数式)が見出されてきました。そして、科学者たちはその数式の中に、ある不変の定数が現れることに気づきます。
物理法則に現れるその不変の定数を、「物理定数」とよびます。
こんにちでは、光速、万有引力定数、電気素量、プランク定数など、さまざまな物理定数が存在することがわかっています。これらの定数は、「基礎的である」という意味で「基礎物理定数」、また、「いつでも、どこでも一定である」という意味で「普遍物理定数」ともよばれます。

先ほど、人間がつくったメートルやキログラムの基準(国際原器)では、劣化や破損のおそれがあると指摘しました。物理定数が一定であるのなら、単位の基準を物理定数自体にゆだねてしまう、という方法が考えられないでしょうか?