戦争回避というミッションを背負い
2月15日、モスクワでドイツのショルツ首相とロシアのプーチン大統領が会談した。先日のマクロン仏大統領もそうだったが、長さ6mもの巨大なテーブルの端と端に座って話し合ったのは、ロシア側によるコロナのPCR検査を拒否したからだ。
そんなわけでショルツ氏は機内で独自のPCR検査を実施し、ロシア側に、立ち会いたかったらどうぞと招待したら、それはロシア側が断ったとか。

さて、この日の会談は食事を含めて4時間。ショルツ首相は、戦争回避が自身に託されたミッションであるとしていたが、奇しくもその日、ウクライナ国境付近にいたロシア軍の一部が撤退する映像が流れた。
もっとも、これが本格的な撤退につながるのか、それとも陽動作戦か、また、この動きがショルツ氏と関係があるのかどうかも、まだわからない。さらにいうなら、撤退の映像の真偽も不明だが、それでも、硬直していた事態が少しだけ動いたという感触はある。
ただ、ショルツ氏が会談後、「話し合われなかったテーマはなかった」と振り返る一方で、合意に達したテーマが一つもなかったというのも、やはり象徴的だ。
これまでの経緯を振り返ると、ロシア軍はウクライナ国境付近に10万の兵を繰り出していたものの、プーチン大統領もラブロフ外相も一貫して、「戦争をするつもりはない」と断言していた。
ロシア側が求めているのは、NATOがこれ以上、東方に拡大しないという保証であり、それを要求するプーチン大統領の決意は巌のように固かった。彼に言わせれば、NATOが元々の約束を破ったことが、現在の危機の原因なのである。
片やここ数週間、NATO側の挑発は激しかった。米軍を始めNATOの国々が東方に兵を移動し、ドイツ連邦軍もその一環としてリトアニアに兵士を送った。
また、NATOのストルテンベルク事務総長も、ブリンケン米国務長官も、もちろんベアボック独外相も、ロシアがウクライナに侵攻したならば、「大きな代償を支払うことになるだろう」と脅迫めいた言葉を吠え続け、メディアはメディアで、戦争の勃発する予定日まで特定して、危機感を煽りまくった。
そして、どの国もがウクライナとの連帯を強調し、その上、まるで競争のように、ウクライナへの武器の供与をアピールした。そんな中、ドイツ政府の態度だけが少し異なり、攻撃用の武器の支援を頑なに拒否。その代わりに軍用ヘルメット5000個を提供すると言って、物笑いの種になっていた。
