国力=メダル数!? フェアスポーツはどこへ?

ロシアのドーピング問題の発覚は今回だけではありません。2014年、ソチ五輪でロシア国家の組織化した一大ドーピングが発覚しました。ロシアにとって、フィギュアスケートは国家が関わるスポーツなので、差し出されたものを拒む権利は選手側にはなかったのではないかと言われています。たまたま見つかってしまったのがワリエワ選手でしたが、まだ表面化していない他選手や他薬物のドーピングはどれだけあったのでしょうか。

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チームドクターのフィリップ・シュベツキー医師は、2008年の夏季北京五輪でロシアのボートチームに不正輸血を行い失格に追い込み、国際ボート連盟から処分を受けた麻酔科医です。2016年にドーピングで出場停止になったアイスダンス選手にも関与したと言われています。他国であればこのような医師が再度他種目の医師として雇われることはないと思いますが、彼は現在ロシア・フィギュアスケートチームの医師を勤めています。

五輪に関するロシアの国としての対応は、日本や北米の常識では考えられない倫理のなさを感じます。また、別次元での勝利への執着にも唖然とするばかりです。

今回の大会も含めて、スポーツ好きの私は日本選手の活躍を目にするとうれしい気持ちになりますし、日本選手は応援してしまいますが、日本選手のメダル獲得が日本という国や日本政府の強さを現わすとは思ったことはありません。しかし、ロシアはオリンピックのメダルの数によって国際社会における国力が示されると認識しているようで、そのためには手段は選ばないという意識が共有されているように感じます。

国によって文化の違いはあって当然です。しかし、多文化が集って競うスポーツの祭典はフェアでなければ意味がありません。オリンピック憲章にも記されている事柄です。

今回ドーピング発覚後にワリエワ選手の出場が認可されました。「未成年で彼女の意図で行われたものではない可能性が高い」という理由も語られました。意図は関係ありません。ドーピングをしている選手が出場停止になるのは選手個人を罰するためではなく、フェアな試合を守るためです。

フェアという点で、ロシアは今まで得点操作のスキャンダルにも多く関わってきました。今回のフィギュア女子シングルのショートプログラムを見てもモヤモヤを感じた人はいたはずです。

ワリエワ選手は、トリプルアクセルもコンビネーションジャンプも失敗したにもかかわらず、得点は、トリプルアクセルを完璧に決めて演技をクリーンに滑り切った樋口新葉選手の10点近く上だったのです。公表された得点のプロトコールを見ても、トップ選手に比べて樋口選手の得点の低さが理解できない、と海外メディアで報道されました。

ショートプログラムで、トリプルアクセルを完璧に決めた樋口新葉選手。photo/Getty Images

今回のドーピング発覚をきっかけに、コーチや連盟、また国組織に変化を促すための介入があることを祈っていますが、今までこれだけドーピングが発覚しながらも同じ国が同じ手段でルール違反を繰り返して、その後変化を見られないことを考えると、残念ながら諦めの思いが芽生えてしまいます。国際オリンピック委員会、国際スケート連盟やドーピングを国際的に取り締まる組織が、ここで動けなければ、今までクリーンに闘ってきた選手達の努力の価値がリスペクトされないことになります。私たちの愛するスポーツへの信頼が消えてしまう危機ともいえるのです。