競技以外の人生があることの重要性

ワリエワ選手に関しても、人としての長い人生というスパンで見れば、「たかがスケートの試合」と言ってもいいものであり、今回の騒動やベストな演技ができなかったことにショックを感じても次第に、「人生はこれからだ」と思えるのが通常の心の動きです。私たちの日々もそうやって、失敗や挫折を繰り返しながら、進んでいます。

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ですが、ワリエワ選手が育成された環境では、「たかがスケートの試合」が全てであり、自らを犠牲にして賭けるものになっているはずです。今回、ワリエワ選手がドーピングスキャンダルを経験したことで、「世界の終わり」のように感じてしまっているのでは、と懸念しています。現状、投薬した経緯はわかりませんが、今後ワリエワ選手のせいでないと報道されたとしても、彼女が今いる環境では、「捕まってしまった自分が悪い」と罪悪感を持ってしまう可能性もあります。15歳の彼女が背負うにはあまりに過酷すぎる現実です。もっと違う世界を見てもらえたら……と思わずにはいられません。

小児精神科医として、ひとつだけアスリートたちにアドバイスできる機会を与えてもらったとしたら、「ひとつの世界だけの価値観やルールに束縛されないように。あなたのスポーツ以外の知り合いや趣味、色々なことに興味を持って」と伝えたいです。これは選手だけでなく、スポーツに関わる大人たち、選手の親にとっても重要なことです。

3歳からスケートをはじめ、15歳の現在までスケート漬けの日々を過ごしてきたワリエワ選手。スポーツ以外の世界を知ってほしいと内田医師は言う。photo/Getty Images

また、何かがおかしいと思うときはほとんどの場合、その勘が正しいことが多いと思います。自分の感覚に自信を持ってほしいですし、その勘を磨くためにも多様な経験が大切になるのです。