コロナ禍で運動不足な人に伝えたい… 現役医師が「運動が大切」と言い切る“科学的な理由”

自分を変えられるのは自分だけ
世良 泰 プロフィール

まずはここからやってみよう

色々とお話してきましたが、いきなり「1日30分間散歩をしよう」「週に2回はジムに行こう」と目標を立ててもなかなかできません。もしそれで継続できるのであれば、おそらく運動について元々困っていない方だと思います。多くの方は健康のためにも運動が重要と分かっていても始められない、続けられないということが多いのではないでしょうか。

ここまでお話ししてきたように、必ずしも時間をとって運動をしなければいけないわけではありません。いつもよりも少しでもいいから身体を動かすことが一番重要です。図3は運動量と死亡率を表したグラフです。最も死亡率が低い運動量が、現在の国の推奨量となっています。しかし一番大切なことは、少しでも運動をすると死亡率が0.8倍に低下することです。

図3 運動量と死亡率(註釈文献3より引用)
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繰り返しになりますが、大事なポイントは、「少しでもいいから運動をすることで死亡率が大きく下がること」です。ほんの少しの変化が人生の大きな一歩になります。まずは今の日常生活でできることから始めてみましょう。

いきなり大きな目標を立てて無理をする必要はありません。いつもはエスカレーターのところを階段にすると、階段の上り下りのカロリー消費自体はそれほど多くないですが、筋力がつくことにより有酸素運動と筋トレを合わせた効果が期待できます。テレワークの合間に散歩やストレッチ、簡単な体操をすることだけでも十分運動となります。寝転がってテレビを見ていたのをスクワットに変えてみる、自分自身で思いつくことであれば何でも構いません。

自分を変えられるのは自分自身だけ。是非今日からほんの少しだけ身体を動かしてみましょう。

【註釈】
1. Lee IM, Shiroma EJ, Lobelo F, Puska P, Blair SN, Katzmarzyk PT. Effect of physical inactivity on major non-communicable diseases worldwide: an analysis of burden of disease and life expectancy. Lancet. 2012;380(9838):219-29.

2. Strain T, Brage S, Sharp SJ, Richards J, Tainio M, Ding D, et al. Use of the prevented fraction for the population to determine deaths averted by existing prevalence of physical activity: a descriptive study. The Lancet Global Health. 2020;8(7):e920-e30.

3. Arem H, Moore SC, Patel A, Hartge P, Berrington de Gonzalez A, Visvanathan K, et al. Leisure Time Physical Activity and Mortality: A Detailed Pooled Analysis of the Dose-Response Relationship. JAMA internal medicine. 2015;175(6):959-67.

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