マンガ/伊藤理佐 文/FRaUweb

タンメンとワンタンメンの違い

「タンメンとタンタンメンとワンタンメンが全然別物なの、初見殺しだと思う」
「タンメンとワンタンメン やっと区別できるようになりました」
「若い頃ワンタンメンとタンメンの違いがまるっきり理解できてなかった」

SNSで「タンメン」「ワンタンメン」と検索すると、こんな意見が出てくる。名前は酷似しているのに全く別の食べもので、困惑したことのある人もいるだろう。

タンメンは野菜たっぷり Photo by iStock
こちらはタンメンではなくワンタンメン Photo by iStock

ほかにも「ジャージャー麺」と「じゃじゃ麺」なんてどうだろう。ジャージャー麺ですら、肉みそをかけた麺と、最初から混ざっている麺でも一見するとまったく違う食べ物に見えるし、じゃじゃ麺は盛岡の名物で、麺もうどんだったりする。
「天ぷら」に至っては同じ言葉でもさつま揚げを指すことだってある。

そんな間違いやすい料理をお店で注文したら「思ったのと違う!」をやっちまったことだってあるだろう。

ではそんなとき、あなたはどうするか。
思いっきりこぶしを振り上げてお店の人に怒ってしまうだろうか。
そしてその間違いを冷静に指摘されたらどうするだろうか。

講談社漫画賞や手塚治虫短編賞を受賞している伊藤理佐さんの名作漫画『おいピータン!!』は、「食」を柱にして、なんとなくモヤモヤいることや、見て見ぬふりをしているような現実をズバッと突き付けてくれる作品だ。その中で2巻に収録されている「タンメン」はまさに「自分にもタンメンがあるかもしれない」と感じさせてくれる作品だ。

 

「間違えられた」と思ったときの態度がブーメランに

人間だれだって、間違えることはある。問題なのは、その間違いで誰かに対して暴言を吐いたり、怒ったりしたときではないだろうか。
料理だけではない。たとえば仕事でも、自分がもともと間違えて日程を伝えていたのに「待ってるのに何で来ないんですか!」なんてクレームをつけてしまったり、相手のメールを読み間違えて怒鳴ってしまったり……。

「タンメン」の主人公の男性は、どうやら「自分は我慢強く」「仕方ないなあと相手のミスも見逃してやったりしている」と思っている人のようだ。どうやら妻に愛想をつかされているようで、「なんで妻が家を出て行ったのかわからない」とつぶやいているところを見ても、「俺は悪くない」が常にある人なのだなと感じさせられる。そしてラーメン屋で数回目の「タンメンじゃねーだろ」を「されて」、嫌味っぽく怒りのクレームをつける。

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』2巻より

そこでほかの客から冷静に「これは『ワンタンメン』ですよ」「『タンメン』って『ワンタンメン』の略じゃないですよ」と言われて凍り付き、気づくのだ。
「おれ、ほか『タンメン』がたくさんあったのかもしれない……」と。

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』2巻より

このエピソードは、そもそも何か問題が起きたとき、カッとなっていいことはないんだとも教えてくれる。間違っていたら間違ってるよとシンプルに伝えていれば、「間違ってませんよ」「えっ、そっか!失礼しました!」で終わるだろう。どんな理由があっても、怒鳴る、暴言を投げつける、嫌味っぽく伝える、それをしなければ、言われる相手の受け取り方だって変わるし、互いに救われるのではないだろうか。結局、意地悪な態度は、時に自分へのブーメランになるのだ。

ちなみに伊藤理佐さんのマンガを原作とし、オリジナル脚本により放送中のドラマ『おいハンサム!!』では、佐久間由衣さん演じる里香の夫・大輔(桐山連)が「タンメン男」として描かれている。第1話ではタンメンを作った里香に「タンメンじゃないだろ!」と怒鳴り、里香をフリーズさせていた。そして里香に家を出て行かれたあと、ラーメン店で「タンメンと思い込んでいたのはワンタンメン」だと気づくのだ……。

「実は自分が違う料理だと思い込んでいただけだった」
「それなのに相手を一方的に悪いと思ってしまった」
「しかも嫌味に怒鳴るような最低の態度でクレームをつけた」

そんな現実を知ることは顔から火が出るほど恥ずかしい。でも、気づくことができてよかったはずだ。間違えていることに気づき、自分が最低なことをしていたことに気づき、人を傷つけ続けることから軌道修正できるのだから。

伊藤理佐さんの「タンメン」を読んで、「自分のタンメンないかな」と考えてみると、ほろ苦い現実も、勇気を出して受け止めることができるのではないだろうか。