「人間都合なら水害、自然からすれば浄化」

2019年10月、福島県いわき市を襲った台風による集中豪雨。江戸時代から続く農家の8代目・白石長利さんは、その時に起きた川の氾濫によって、すべてを失った。家族4人で暮らす自宅、苗が根付いた畑、田んぼは水没、ハウスや農機具は泥に埋まり、収入は絶えた。
けれども白石さんは「人間から見れば水害だけど、自然からすれば、浄化とも言えますから」と、当時を笑顔で振り返る。

からっ風吹きすさぶ白菜畑は、体感温度は氷点下だが、「この環境が白菜を甘くする」と白石さん。photo by 吉田篤史

洪水で畑に運ばれた泥は雑菌が混じっているため、被害のあった田畑は、半年間は何も育てられなくなる。半面、泥は栄養も含む。おかげで台風から3年目の今年は、以前は使っていた有機肥料が必要なかったという。
家や田畑を奪った洪水は、益をもたらす一面もあるというのだ

泥は、雑菌も含むが、栄養も運んでくれる。今年の畑は、最高に良いという。photo by 吉田篤史
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「それと、2011年の震災がきっかけでできた繋がりに、台風の時はすごく助けられました。全国から支援物資がすぐ集まって、たくさんのボランティアも来てくれた」 

台風で被災した生産者や、かけつけてくれたボランティア仲間と白石さん(右端)。(白石さんのfacebookより)

なんという強さだろう。震災の時も、こんな風に乗り越えてきたのだろうか。その問いに、白石さんは首を振って、答えた。

「あの時とは全然違います。震災の後は、絶望しかありませんでした。世の中が白と黒にしか見えなくなった」

photo by 吉田篤史