2022.03.28
# ビジネス

リーダーが「いい人」すぎても逆効果…チームの「心理的安全性」を損なう「3つの落とし穴」

斉藤 徹 プロフィール

心理的安全性は十分条件ではない

(3)「話しあえば解決する」という誤解で、能力発揮が減る  

対話や議論、その基盤となる心理的に安全な場づくりは、チームづくりにおいて最も重要な基盤である。しかし、それですべてが解決するわけではない。

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例えば、アイデアを創出するプロセスにおいては、

(1) 発散局面:アイデアをひろげる段階

(2) 収束局面:アイデアをまとめる段階

がある。(1)は具体化のプロセスであり、多様な視点からの多様なアイデアを出すために話しあいが重要だが、(2)は抽象化のプロセスであり、少数精鋭による情報集約と卓越した創造性(思考のジャンプ)が必要となる。

1978年にノーベル経済学賞を受賞した経営学者ハーバート・サイモンは、チェス名人に、チェスの盤面上の動きを数秒見せて、それを再現させるという実験をした。

興味深いことに、実際の対局から抜き出した局面だとほぼ間違えることなく再現できたが、ランダムな配列だと初心者と同じぐらいしか再現できなかった。チェス名人は駒の配列を映像として覚えるのではなく、典型的なパターンの組み合わせとして覚えているということがわかったのだ。

この実験から、専門能力とは「脳内にある、数万のつながり記憶(チャンク)」であること。また、人間がそれを獲得するには少なくとも数年間の経験が必要だとサイモンは考察した。

 

サイモンの時代と比較すると、今の世界は飛躍的に複雑になった。あらゆる分野はテクノロジーによって相互に深くつながっているため、幅広い知識や多様な経験をもとにした、分野横断的な専門能力の重要性が高まっている。課題に適合した、多様な専門人材を集められるか。多様性と心理的安全性のかけ合わせこそ、知識社会における競争優位の源泉となってきたのだ。

つまり問題解決においては、個人の専門能力や創造性が大きな鍵を握るということだ。心理的に安全な場は必要条件だが、十分条件ではない。心理的に安全な場がないと個人の能力は活かされないが、話しあいだけですべてが解決するわけではない。チームと個人の相互作用によって、高い付加価値が生み出されるのだ。

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