2022.03.28
# ビジネス

リーダーが「いい人」すぎても逆効果…チームの「心理的安全性」を損なう「3つの落とし穴」

斉藤 徹 プロフィール

人の能力は属する組織によって変わる

人を資本と捉えると、人のつながりは「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」と表現できる。可視化しにくい「見えざる資本」だが、知識時代に入り、その重要性が認識されてきた。

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井伏鱒二の短編 『川釣り』の中に、甲府湯村温泉の旅館、篠笹屋に実在する番頭「喜十さん」をテーマにした小説がある。彼は三人いる番頭の末席で、酒も煙草もやらずに話しベタ、ミスをして女中頭に頭ごなしにしかられてしまう、冴えない中年男だ。

一方、伊豆八津温泉の旅館、東洋亭には「内田さん」という番頭がいる。気の利く粋な人物で、身だしなみもよく、周囲からは絶大な信頼を集めている。

東洋亭の番頭の名は「内田喜十」、つまりふたりは同一人物だ。毎年、甲府温泉が閑散とする冬夏のシーズンだけ、うだつのあがらない「喜十さん」は伊豆へ出向き、卓越した番頭「内田さん」に変身するのだ。

同じ人間でも、組織によって発揮できる能力が異なってしまう。伊豆の東洋亭でのソーシャルキャピタル(関係性)は彼の能力を十分に発揮させるものであるのに対して、甲府の篠笹屋のそれは彼本来の能力を削いでしまうものであったのだ。

成果の達成に走ると組織はどんどん乾いていくし、人間関係に過剰に配慮すると組織はどんどん湿ってしまう。いずれの場合も、参加する人々は本音を話すことが難しくなり、特定の人の意見に傾斜していってしまう。うまくバランスをとることは難しいが、いずれにしても「心理的安全性」の存在は必要となる。

 

人は対話を通じて、いい関係性をつくることができる。そして、その対話は「いい場」から生まれる。いい組織を望むのであれば、手間と時間をかけて、組織の土壌を耕そう。

まずは自分のチームからはじめる。僕たちが組織を変えていくために、それがはじめの一歩になるだろう。

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