「食べ過ぎ」の前にある、まったく別の問題

「食べ過ぎてしまうこの食欲をどうにかしたい!」という人に知ってほしいエピソードがある。

以前、飲食店のアルバイトを始めてから太ったと言う友人がいた。よくよく話を聞くと、「バイト先の飲食店でまかないをもらって夜遅く帰り、お腹が空いているので、もらったまかないを食べ、すぐ寝る生活を繰り返している」とのことだった。

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多くの人はきっと「だから太るんだ」と結論づけてしてしまうだろう。でも、私はさらに突っ込んで話を聞いてみることにした。すると、「実は引っ越してから忙しくて、冷蔵庫もレンジもまだ買ってなくて、夏だから食べ物の保存がきかないんだ。お金もないからまかないで食費が浮くのは助かるんだけど、店長がよかれと思って多めにまかないを持たせてくれるから残すのももったいなくて……」ということだった。

この場合、本当の問題は「食べたあとすぐ寝ること」そのものではなく、部屋に冷蔵庫やレンジがないことで、腐敗する前に食べ切らないといけないこと。金銭的余裕がないこと。そして、まかないを持たせてくれるバイト先の店長の好意に対して「このぐらいで十分です」など、量の交渉ができないことだと思った。その友人は、自分の意見を通すよりも、周りの空気を読んだりしながら場を盛り上げるのが上手な人だった。しかし、そのお人好しの性格が、結果的に自分の許容範囲以上の食べ過ぎに繋がっていたのかもしれない。

毎日持たせてくれるまかない弁当。量が多いと思っても断れないことが根本的な原因だった。photo/iStock

他にも、毎食外食をするようになり太った人の話をよくよく聞くと、実は「キッチンが狭くて自炊できず外食になる」「買った方が安上がりだから」という理由だった。また、スーパーで割引やお買い得な食品があるといくつも買い「たくさん買うと得した気分になるし、食べないともったいない気がして食べ過ぎてしまう」という人もいた。食べ放題のレストランで「元をとろう」と、あれこれ食べているうちに、苦しくなるほど食べすぎてしまった経験がある人もきっといるはずだ。  

このように「食欲を我慢できない」というより、本当はその背後にある状況的な問題で食べものとの関係がうまくいっていないケースは意外と多い

また、脂肪がつきやすくなる原因は人それぞれ異なる。病気や治療薬の副作用、ストレス過多や睡眠不足、内臓の調子が悪かったり、ホルモンバランスや自律神経が乱れて代謝が落ちている、そもそも遺伝的な体質など、理由があって体がエネルギーを蓄えるモードに変わっている場合もある。

だから一律に「太った」=「食欲を我慢しよう」「とにかくこれを制限すればOK!」というやり方は、表面的な対処方法にすぎない、と私は思っている。また、太っている人を見るなり「食い過ぎなんだよ! 自己管理がなってない!」と責める人は、木を見て森を見ず状態なのだ。そんなに他人の体が気になるなら、まず献血に行って本当の意味で他人の役に立ってほしいと思う。

ここまで繰り返してきたように、「とにかく食べることを制限すれば痩せる」というダイエットは、太りやすい体を作るトレーニングになり、心も体も、そして人生をもダイエットに奪われてしまう可能性がある。